彼女にも思うところがあるのだろう。あまり深く詮索するのも酷だろうから、俺は話を異世界のことに切り替えた。
誰かと食事するのは、楽しかった。この一言に尽きる。ただただ楽しかったんだ。
本来の調子を取り戻した彼女は雄弁に、勇者時代の
「ではステーキに」
「待てや! 肉焼いただけの料理が存在しない異世界ってなんなんだよ!!」
「だって……食べたいんですもの」
「ほらやっぱりあるんじゃん……っていうか明らかに予算オーバーしてるじゃねえか!」
「やだ! スズコはこれ食
ATMに5千円札が1枚。それが今の俺の全財産。 なんで5千円札って紫色しているんだろうね! あはは!
「……勇者さま。わたくしはこちらの世界の住人だったこともあり、お金の価値に疎いということはないでしょうけれど。もしかするとわたく
所謂、不良ってやつだ。しかも中学生の。いつも咥えタバコで、しゃがみこんで威圧してきやがるんだ。だから俺はできるだけ殺気を消しながら、相手を刺激しないようにコソコソとコンビニに入るのだが、彼らは相手が弱者と察すると奪い取る生き物なのだ
ああ、ああ、そうだ。
「ごめん、姫様」
「どうかなさいました?」
「水飲んでいい?」
「え、ええ……いいですわよ」
蛇口から水を直飲みしたあと、水垢まみれのシンクを見下ろす。そういえば腹が減ったなあ。
「姫様、俺は飯が食いたい
「ああっ、そんな委縮しないでくださいまし! 何故ならわたくしはお願いをするためにここにいるのです!」
「まさか……そ、その内戦を止めろって言うんじゃないでしょうね?」
委縮しているわけではない。対面して人と話すなんていつぶりだろう
このままではいけない、と日雇いのバイトに登録するも給料は雀の涙ほどで結局消費者金融に頼らざるを得ない事態。2年で払い終わるはずが、返していたのも初めのうちだけで、1年経つころには借入先が2社。ちなみに現在4社。延滞を重ねに重ねたた
「……ッざけんな!!」
郵便受けに入っていた封筒を開けるや否や微塵になるまで破って紙吹雪の如くばら撒く。ゴミはゴミ箱へ? ゴミ箱は3ヶ月も前からいっぱいになってんだよ。なめんな。
足の踏み場もない床の僅かな空白を紙片が埋めていく。