『THE BATMAN』は社会人2年目が見るべき!? ラノベ作家が語る“ヒーロー未満映画”の魅力

 

■第三回
「『THE BATMAN』は、若者が仕事に希望を見出すヒーロー未満映画」

はじめまして、またはお久しぶりです。小説家の羽場楽人(はば らくと)と申します。

2022年、最初のコラムです。
今年は二カ月連続で小説を発売するいきなりのロケットスタートでした。

電撃文庫『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね』五巻とGA文庫『みんなのアイドルが俺にガチ恋するわけがない』一巻、どちらも好評発売中です。

ぜひ読んでみてください。

昨今フィクションも真っ青な時代だからこそ、楽しい小説をお届けできればと思います。

このコラムでは私が影響を受けた作品を取り上げております。

第三回で取り上げるのは映画『THE BATMAN』。

もはや説明不要の世界的に有名なアメコミ界のスーパースター・バットマン。そのバットマンを原作とする新作映画です。

『THE BATMAN』は、仕事に迷える若い人に見ていただきたい。

特に社会人二年目くらいの人。

というのも今回のバットマンはヒーローになりたての二年目という新人設定で物語はスタートします。

仕事も覚え、サポートもあり、ある程度は自分の裁量で処理できます。

しかし、自信と呼べるような実績や成功体験にまだ欠ける若者。

自分の揺るぎない軸がまだ確立されておらず、自分のやっていることに意味があるのか、と悩める新人バットマンはかなり疲れています。

仕事で手いっぱい、プライベートの時間がほとんどなく、具体的な息抜きとなる趣味もない様子。恋人もいません。

事実、劇中でバットマンがその蝙蝠のスーツを脱ぐことはごくわずか。そりゃ四六時中、仕事のことで頭がいっぱいになったら病むのも当然です。

しかも環境も過去一に最悪。
舞台となるゴッサムシティは公権力が腐り、犯罪に溢れ、治安が悪い。

そんな危険で救いのない街で、自分の正義を成すのは苦行でしかありません。もう休め、辞めてもいいと心配になるバッドマンは初めてではないでしょうか。

これ、すごく今っぽいと思います。

自分が本当にしたいこと、するべきことが見えていない時の息苦しさは、誰しもが一度は抱えたことがあるでしょう。

『THE BATMAN』は暗く重く、病んだ物語です。

それを象徴するように劇中のほとんどが陰鬱な雨のシーンばかり。降り続けた雨がもたらす衝撃のクライマックス。

その渦中でバットマン自身が見出す希望にはとてつもなく価値があります。

私はこのラストにとても感動しました。
仕事が楽になるわけではない。
だけどやるべきことの意味や、新しい方向性を自分で見出した時の感動は確実に長い人生を支えてくれます。

ぜひ『THE BATMAN』を観て、若きバットマンと一緒に闇を彷徨いながら、自分だけの希望を見つけください。長い映画ですが、オススメです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

次回のコラムもよろしくお願いします。

 

羽場楽人(はばらくと) 

(C)羽場楽人

4月30日生まれ。東京都文京区出身。O型。
2016年12月に電撃文庫より『わたしの魔術コンサルタント』でライトノベル作家デビュー。同作はラノベニュース・オンラインの月間アワード三冠を獲得するなど高く評価された。
2020年から現在も刊行中の『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね』が大ヒットシリーズとなる。新作『みんなのアイドルが俺にガチ恋するわけがない』はGA文庫より発売中。
趣味は映画鑑賞とスニーカー収集。
Twitter:@habarakuto
わたラブPV:https://www.youtube.com/watch?v=8JyirDQSg1Q&list=LL&index=11&t=35s