「ガイドボーカル」ってどんなお仕事? “仮歌さん”が教えるプロの仮歌術/連載 防音室の仮歌さん vol.2

 

年始から2月にかけて、とにかくずっと歌っている。

仮歌冥利に尽きる。
なかには自分が歌を歌うと決めた原点に関わる仕事もあり、身が引き締まる思いだ。

前回の記事を掲載いただいた後、たくさんの方から反応があり、小躍りした。
みなさまありがとうございます。
音楽を作るのに欠かせない職人「仮歌シンガー」のお仕事とは?/連載 防音室の仮歌さん vol.1

さて、今回は「ガイドボーカル」の仮歌とはなんぞ? ということについて。

私は今まで仮歌さんとしてガイドボーカルを600曲ほど歌っている。

もちろん、仮歌なので公開されることはない。
しかしながら、1曲だけオーディション用の楽曲として公開されているので聞いていただきたい。

・Smewthie! 「bitter sweet darling」
ーTVアニメ『東京ミュウミュウ にゅ〜♡』キャストユニット

ガイドボーカルと聞くと、カラオケで流れてくる歌のことを思い出す方もいるかもしれない。

が、ここで言うガイドボーカルとは、「完成した楽曲を実際に歌うアーティストに聴かせるための歌」である。

アーティストがレコーディングするとき、最初に聴くのがガイドボーカル入りのデモ。それに加えて、ドラムやギターなどを録音する際もガイドボーカルに合わせることがある。

……書いていたら改めて責任の大きい仕事で緊張してくる。

さて、仮歌さんとしてガイドボーカルを歌うとき、気をつけていることがある。

①覚えやすい声のトーンであること
②表現方法の提案をすること

①は基本であるが、私が特に大切にしているのは②だ。

特に声優さんで多いが、とても耳が良いためにガイドボーカルを無意識のうちにそのまま真似して歌ってしまうことがある。

それを防ぐためにあまり抑揚をつけて歌わないガイドボーカルもある。

しかし、私の場合はそれを逆手に取ることにしている。
「この言葉はこう歌うと気持ちが乗るのでは?」
「声の強弱はこれくらい」
など、仮歌入れの時点でご提案をしてみよう、というわけだ。

そのためにはアーティストさんの過去の曲をたくさん聴き、
・その方の歌いグセ
・発声の方法や声の響き方
・キャラソンであればキャラの性格など
の情報を収集する。

そしてさらに加えて、
・こう歌ったらもっと良くなるし面白いのでは?
というご提案をしていくのが、私にとってのガイドボーカル仮歌さんの仕事だ。

ここで一番気をつけているのは「モノマネにならない」ことである。

あくまで+αの提案。
言葉を咀嚼し、メロディをなぞって表現を決めていくのはアーティストさんご本人である。そのためには絶対にアーティストさんの歌を決めつけないこと。

これが一番大切だと思う。

すごく説明が難しいのだが、
例えば私の場合、洋楽のヒットチャートをBGMとして流しながら、「いいな、この表現真似したい」とか、「うお〜これだけ歌えたらいいな〜」とか、そういうことを考えて自分の歌に取り入れていく。

そんなふうに集めた「いいな」が、アーティストさんにも伝わったら嬉しいな、と思いながらガイドボーカルを歌っている。

作家さん、仮歌さん、ミュージシャンの皆さん、そしてアーティストさんまで、そんな「いいな」の集大成で、皆さんの心が躍ることが一番の喜びだし、本当に楽しい。

そんなふうに思いながら、明日も仮歌を歌っていきたいと思う。

 

maimie(まいみい)

(C)maimie

仮歌シンガー、作詞家。
アニメソングを中心に、ガイドボーカル仮歌は約600曲、コーラスは約250曲に参加。

代表作
・「からだ☆ダンダン」歌唱
・アニメ「結城友奈は勇者である -大満開の章-」劇伴コーラス
・電音部 「ペトリコールを渡って」作詞
・グランブルーファンタジー「キミとボクのミライ」作詞
など

twitter:@maimiee
公式サイト:https://maimie.jp/