18歳での歌手デビューが決まっていた!? 声優・中原茂の青春ストーリー

 

自分は何故「声優」になろうと思ったのか。
今回は、少しというか、長くなりますが、「前・後編」に分けて、この事について語らせて頂こうと思っております

61歳になりました!(C)ローカルドリームプロダクション

始めにどうして目指そうと思ったのかは忘れてしまったが、僕は「歌手」になりたかったのだ。その頃は歌謡曲全盛の頃で、オーディション番組も幾つもあった。

その中でもダントツに光り輝いていたのは「スター誕生」。実は僕も2度程チャレンジしている。

毎週末、有楽町の「読売ホール」でオーディションが行われ、最後迄残った者達がテレビの本選に出られるという仕組みだったと思う。

僕は残念ながら2度共、1次予選で涙をのんでいた。「読売ホール」は確か7Fか8Fにあったのだが、いつも1F入口の外からギッシリと長蛇の列で、物凄い熱気に溢れていた。

あの頃「スター誕生」からは、本当に数多くの「スター」が生まれていたのだ。

高1の頃には「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」に応募し、1次審査は通ったのだが、親の反対にあい、レッスンに行く事は叶わなかった。

でも、諦めたくなかったのだろう。
サンミュージックの「新人開発部」に応募し、通ったのだが、やはり案の定、親には反対された。

しかし、僕の熱意に負けたのか、8月&9月の2か月だけなら良い、という条件付きで、僕は毎週末、四谷へ通う事となった。

レッスン内容は基本的な発声から。
僕への教材は「コールユーブンゲン」が使われ、課題曲は好きな歌を選べたので、松崎しげるさんの「私の歌」。そして、沢田研二さんの「勝手にしやがれ」を選んだ。

たった8週間の冒険だったが、僕はレッスンの度にまるでスポンジのように様々な事を吸収して行った。

そして最後のレッスン。
僕は2か月で辞める事は伝えていなかったのだ。

担当の先生からは、「そうか、残念だな。18歳でのデビューを考えていたんだが」と言われた。その言葉を聞いた僕が「続けます!」とどれ程言いたかった事か。

しかし、約束は約束だ。
後ろ髪を思いっ切り引かれ乍らも、僕は、サンミュージックを後にした…

これで歌への夢も儚く消えたかと思っていた。

だが。
高校2年の時に入った「新聞部」が僕の運命を大きく左右する事になるのだ。

一緒に入った奴らが、皆、ギターを弾いて歌っていたのだ。僕は歌謡曲は知っていたのだが、フォーク・ニューミュージック系は知らず、「ビートルズ」さえ知らなかった。

「何だ中原、お前何も知らないのか? じゃあまずはこれを聴けよ」と、友人達からLPレコードやカセットテープを借りて聴き始め、自分もドンドンのめり込んで行った。ギターを弾き始めたのも「お前もやれよ」と言われたからだ。

スタートに選んだのは、バンバンの「いちご白書をもう一度」。

そんな受動的な僕が、能動的な僕へと姿を変えるのに、そんなに時間は掛からなかった。

昼休み、放課後、新聞部の活動以外の時間は、ギターの弾き語りばかりやっていた。そんな或る日、僕は、自分の運命を決定づける、2枚組のライブLPに出会う。

グレープの解散ライブアルバム「三年坂」。

多分、僕は、この時、歌を聴いて、初めて、心が大きく揺り動かされ、感動したのだ。歌を唄って、人の心を感動させるなんて凄い! と思ったのだ。

それからだ、僕もそういう歌い手になりたいと思い、シンガーソングライターを目指そうと心に誓ったのは。

そこから、オリジナルも創るようになり、どんどん、人前でも唄いたいと思うようになっていった。たまたまなのだが、母校のバス停の前に「珈琲館」という喫茶店があり、そこでは毎晩、様々な人が唄っていた。

それは僕等も知っていて、僕も友人に話していたのだ。「あそこで唄えたらいいよなぁ」と。

するとある日、友人と珈琲館に行った時、その友人が店の人に、「こいつ唄わせてやって貰えませんか?」と単刀直入に頼んだのだ。

「えっ」と驚く僕を尻目に話は進み、店の人が「いいよ、じゃあ今度の土曜日の夜唄って見てよ」となったのだ。

友人は「良かったじゃん!」と肩を叩いてくれたのだが、テストもなく、いきなりステージという事で、頭は爆発しそうだった。

そして、ここから、1年余りに及ぶ「珈琲館デイズ」が幕を開けるのだ。

それは、青春真っ只中の、大学1年の頃だった。

これから又色々あり、「声優」を目指す事になるのですが、それは次回「後編」で。

今回もお読み頂きありがとうございました。「後編」もよろしくお願いいたします!

春よ来い!(C)ローカルドリームプロダクション

 

中原茂(なかはら しげる)

(C)ローカルドリームプロダクション

1961年生まれ。鎌倉市出身。みずがめ座の0型。
「ドラゴンボール超」人造人間17号、「新機動戦士ガンダムW」トロワ・バートン、「戦国BASARA」シリーズの毛利元就、「幽遊白書」妖狐蔵馬など数々のキャラクターを担当。
吹き替えでも「ビバリーヒルズ高校白書・青春白書」ブランドン・ウォルシュや「X-MAN Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」のサイクロプス役などを担当。
ラジオ番組「yuhaku presents 中原茂の『ただ風の中で』」は毎週金曜日19時からFM JAGAで放送中(Apple Podcast、Spotifyでも配信)

Twitter:@Kotonoha_NS
事務所公式サイト:https://localdream.jp/nakahara
中原茂公式サイト:http://www.nakaharashigeru.com/index.html