リハの30分前に台本読み!? 中原茂が語る“あの頃”のアニメ・吹き替えの収録現場

 

声優の中原茂です。さて今回は、昔と今の、アニメや洋画の収録方法の違いについて話させて頂きたいと思います。

「戦国BASARA」出演陣の皆さんと(C)ローカルドリームプロダクション

まずは、アニメ。
今では、リハ用の盤を頂いたり(当日必ず返却)、データ(期限あり)で送られてきた画像を見ながら、各自自宅でリハを行い、スタジオでの本番に臨むというスタイルなんですが、あの頃は、本番の日に、ディレクターの本直しが入った後、一度フィルムが流れ、各自チェックをして、テスト・ラステス・本番。もしくは。テスト・本番という形で収録が進んでいきました。

レギュラーの場合は、キャラクター等は判っていて、台本も事前に受け取っているのですが、ゲストで行った場合は、その場で台本が配られ、キャラ表を見せられる事も多く(台本とキャラ表を事前に渡される現場もありました。ケースバイケースでしたかね)、そして監督から説明を受けるという流れが殆どだったので、臨機応変な対応と、キャラを即座に掴む感性が大きく求められたのかなと思います。

なので、いつもニュートラルでいる事を心掛けていたかもしれません。

次に、洋画。
こちらもアニメと同じく、今は、リハ用の盤を頂いたり、データで送られてきた画像を見ながら、各自自宅でリハを行い、スタジオでの本番に臨むというスタイルなんですが、あの頃、洋画の場合は、本番の、前日か前々日に、「リハの日」が設けられていて、全員が集まって一度だけ見るという場があったんです。

台本はそのリハの日の、リハが始まる前の、早くて30分前かギリギリに配られ、そこで初めて自分の役が分かるという。

長尺と呼ばれる洋画の場合、テレビで2時間枠の場合、CM等を除いた90分程になるのですが、だいたい、6~9位のロールに分かれるんです。だから自分がどのロールに出ているのかをまずはしっかり把握していかないといけないんですが、各ロールの香盤表から役が漏れている事もあるんです。だから1度しか流れないので、しっかり集中してみていかないと、自分の役の出番を見落としかねないので、いつも本当に「全集中」で見ていました。

僕達が「ボイスアーツ」で教えて頂いていた大御所のKディレクターからは「一度で憶えろ」と口をすっぱくして言われていました。いつも台本チェックをする暇もなくリハが始まっていたので、映像と台本を追い掛ける事で精一杯で、何とか全てを憶えようと必死でした。

西部劇の場合、撃たれた人間に「ヤラレ」を全てに入れる事もあったんですが、そんな時は、1人なのか、2人同時なのか、1人づつ撃たれたのか、等をしっかりチェックする事も若手の仕事でした。

それから収録の時は、片耳のヘッドホンを使うんですが、今は無線なんですが、昔は有線だったんです。そしてヘッドホンの数が限られていたので、主人公や大きな役以外の人達は、本番中、自分の出番が終わったら、音を拾わない、マイクの横の下の椅子等に置いて、下がるという事を繰り返していたんです。それも中々に神経を使う作業でした。だからテストが終わる頃には、コードが絡まり放題だったので、一度ボックスから全てのコードを引き抜いて、絡まりを正して綺麗にして、コードをボックスに指し直して本番に臨むという作業を必ずしていました。

ボックスは、マイクとマイクの間に、セッティングされていました。マイクへの入り方、出方にも毎回注意を払っていました。マイクが3本の場合。このセリフは1番のマイクに右からはいって。次のこのセリフは3番のマイクに左からはいって。その次のセリフは2番のマイクに左から顔だけ突っ込んで一言…というように、テストの時に、マイクの出入りをしっかりと確認しておいて、台本にもチェックを入れておきました。これはアニメも同じです。

一度、若本さんのマイクに「~このセリフの時に右から入らせて頂きますので」とお願いした所「中原、俺が忘れているようだったら突き飛ばして構わないからな」と言われたのですが、勿論、そんな恐ろしい事は出来ないので、コソッと入らせて頂きました。そんな現場で毎回思っていた事は「誰もNGを出さない」という事でした。長尺の場合、1ロール、長い物で30分とかたまにあるのですが、その30分の間、止まる事がないのです。

NGを出すとしたら僕達若手でした。
これは勿論アニメも同じで。
「本番は一発で決めろ!」「本番で一番いい芝居をしろ!」をいつも肌で感じていました。

でも、それが当時、当たり前の現場だったので、凄い、中堅・ベテラン・大ベテランの方達と同じスタジオで、その方達の息遣いを体感出来た事は、とてつもなく大きな経験となりました。

あの頃はまだ月曜日~日曜日まで、毎晩21時から、洋画劇場があった時代で。Kディレクターに一度だけ、六本木にあった、小森のおばちゃま(当時の著名なコメンテーター)のお店に連れて行って頂いた事があります。

「中原も早く、小森のおばちゃまに紹介されるような作品に出られるようにならないとな」と、そんな事を言われました。

そうそう、あの頃はまだ、アニメも洋画もフィルムだったので、本番になるとスタジオの灯りが消え、各マイクスタンド上からのピンスポットだけになったのです。本番のランプが赤々と灯り。まるで、物語の舞台に誘われるような、そんなスタジオの雰囲気が僕はとても好きでした…

今回は、昔と今の収録方法の違いを話させて頂きましたが、僕達の仕事には、「持久力」と「瞬発力」のその両方が必要で、求められます。

一度しか見られなかった昔と、何度でも見直せる今。
きっと、この両方を、良い匙加減で満たす事が出来るようになれば、とてもいいのかなとは思っています。

今回も最後まで御付き合い頂き、ありがとうございました。
次回も又、よろしくお願いいたします!

 

中原茂(なかはら しげる)

(C)ローカルドリームプロダクション

1961年生まれ。鎌倉市出身。みずがめ座の0型。
「ドラゴンボール超」人造人間17号、「新機動戦士ガンダムW」トロワ・バートン、「戦国BASARA」シリーズの毛利元就、「幽遊白書」妖狐蔵馬など数々のキャラクターを担当。
吹き替えでも「ビバリーヒルズ高校白書・青春白書」ブランドン・ウォルシュや「X-MAN Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」のサイクロプス役などを担当。
ラジオ番組「yuhaku presents 中原茂の『ただ風の中で』」は毎週金曜日19時からFM JAGAで放送中(Apple Podcast、Spotifyでも配信)

Twitter:@Kotonoha_NS
事務所公式サイト:https://localdream.jp/nakahara
中原茂公式サイト:http://www.nakaharashigeru.com/index.html

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