台本に書かれた“数字”の意味、分かりますか? 声優が教える演技台本の秘密
第5回「演技台本ってどんな感じ?」
皆さん、こんにちは!
声優の明日葉よもぎです。
皆さんは、声優がどのような台本を使ってお芝居をしているかご存知ですか? アニメ、舞台、ゲーム、ボイスドラマ等々… 形式は様々ですが、演じるにあたり、絶対に欠かせない、とっても大切なものが台本です。
以前から「台本って、セリフ以外に何が書かれているの?」「どういった台本が読みやすいの?」と、問われることが多々ありまして、その度にいつか台本についてお話したいと思っておりました。まさかその想いがコラムで叶うとは…! とても嬉しいです!
前回の記事でご紹介した「明日葉よもぎのASMR料理 #3~ふわふわ彼女と一緒にシチュー作り~」の台本を使って説明していきます。
動画と一緒に台本をご覧頂くと、より分かりやすいかと思います。
一度お聴きくださった皆さんも、是非もう一度お聴きください。

(C)明日葉よもぎ
こちらが冒頭から約5分30秒までの台本です。
音声作品という、主に聞き手であるユーザーさんに話しかける作品での形式と同じです。主人公の声は無いので、基本的にはメインとなるキャラクターの声と効果音だけが聞こえてきます。
この動画の場合「彼女」であるヒロインが「彼氏」である主人公(ユーザー)と一緒にお料理をする、というシチュエーションボイスですね。なのでこういった作品では、相手の姿や行動、発言などを想像しながら演じていきます。
それでは、台本の中のそれぞれの表記や記号の説明をしていきます。こちらをご覧ください!

(C)明日葉よもぎ
(1)通し番号
1ページ目の最初のセリフからラストページの最後のセリフまで、一続きに書かれているセリフの番号です。一目で何番のセリフのことを話しているのか分かりやすい為、クライアントさんやエンジニアさんとのやりとりがスムーズになります。(この後の説明でも「○番のセリフ」という形で使っていきます)
(2)ト書き
登場人物の動作や位置関係、場面の状況や効果音の指定などを書いたものです。対象のセリフの前に書かれてあります。セリフでは無いので声に出して読むことはありません。
こちらは自分で作った台本なので特に書いていませんが、演技指定が書かれたものもあります。
例えば1番のセリフ「あっ…あれ?もう帰って来たの!?」
帰りが遅くなると思っていた彼氏が早く帰って来て、驚いているシーンですね。今回は予想外の出来事に普通に驚いたお芝居をしましたが、このセリフの前に演技指定として【驚きながらも嬉しそうに】や【焦った様子で】など書かれていた場合は、演技を変える必要があります。
他にも、声のボリュームについて「小声」「囁き」等の指定も書かれていたりします。因みにこういった演技指定から、そのキャラクターがどんな人物か、相手をどう思っているかなどを読みとることも出来るので、役作りをする上でも大事な情報です。
また、動作を説明するト書きもとても重要です。
11番や13番のセリフの前に【~~を切りながら】と書かれていますが、野菜を切りながら喋っているのか、それとも野菜を切っている手を止めてから喋り始めているのかでは状況が少し違います。
…とはいえ、今回切った野菜くらいでは過度に力を込めたり、踏ん張ったりする必要は無いのでそんなに声には現れません。(これが“カボチャを切りながら”だったら変わると思います…!)
(3)位置指定
第3回の記事をご覧になった方はこの数字が何を示すのか予想できたかと思いますが、バイノーラルマイクで必要となる位置指定です。以前も載せましたが、こちらをご覧ください。

(C)明日葉よもぎ
この図は、立ち位置が数字で示されたものです。
例えば、1番のセリフでは⑨→①と書かれていますが、これはセリフの間で⑨(正面遠目)から①(正面近く)に移動しながら喋るというものです。
15番のセリフも同じように移動しながら喋るセリフですが、動画内のこの部分をお聴き頂くと、左から右に声が移動したことがよくわかると思います。逆に9番のセリフの場合は、それまで①番(正面近く)で喋っていて、8番のセリフを言い終わった後に移動し、移動してから③番(左耳近く)で喋ります。
こんな感じでバイノーラルマイクの際は、どこで喋るかを示した位置指定が書かれています。なので、モノラルマイクでの収録の場合はこの指定はありません。
以上3つと「」でくくられたセリフが、主に台本に書かれていることです。
では次に、私が思う“読みやすい台本”についてお話します!

(C)明日葉よもぎ
ポイントと思う部分に印をつけました。
(1)通し番号の有無
先程説明した通し番号ですが、台本によっては書かれていないものもあります。どちらが正解というわけではありませんが、私はあると嬉しいです! 理由は、ここまでお読みくださった方ならお分かり頂けるのではないでしょうか?
…そう! 説明をする際に分かりやすいからです。
例えば、こちらからクライアントさんに「このセリフについてお尋ねしたい」と思ったとき、クライアントさんやエンジニアさんが「このセリフをリテイクしたい」と思ったときです。番号が無いと「1ページ目の真ん中くらいの「時間はとりあえず3分くらい!」というセリフなのですが…」と言うことになりますが、番号があれば「10番のセリフなのですが…」と、簡単に伝えることが出来ます。言われたときも、すぐにそのセリフにたどり着くことが出来ます。
特にスタジオ収録の場合、収録時間が限られている為、こういったやりとりはスムーズに行えると良いなと思います。ただ、リテイクについてはスタジオさんによってやり方が違うので、そこは臨機応変に対応します。
(2)セリフとト書きのサイズの違い
一目でどれがセリフなのか、どれがト書きなのかわかりやすいようにサイズを変えてある台本は見やすいです。他にも、ト書きの色を変えてある台本も見やすいです。
(3)一セリフの量と余白
経験上、一セリフあたり大体1行~多くても3行の台本が多いです。
「」でくくられたセリフが5行…6行…それ以上書かれていたら読みにくく感じます。また、余白も適度にあった方が有難いですね。こちらもビッシリ文字があったら読みにくい、というのは勿論ですが、台本上に色々と書き込みたいからです。(台本チェックについてはまたの機会にお話しますね。)
(4)位置指定の番号
位置指定についての重要さはお分かり頂けたかと思いますが、番号ではなく左右前後で書かれている台本もあります。これもどちらが正解かということではなく好みです。
私は番号の方が嬉しいのですが、理由は… やっぱりわかりやすいからですね。複雑な指定になればなるほど番号の方が図を想像出来るのでわかりやすく、共通認識しやすいと思います。私が演じたバイノーラル作品の傾向として、番号指定で書かれた台本が多く“慣れているから”というのもあるかと思います。スタジオによっては番号を書いてあるところもあるので、その場合は併せた記載だと喜ばれると思います。
…などとご質問があったので色々と書いてみましたが、あくまで私が“読みやすい台本”です。これが正解というわけでもなく、他の演者さんもまた“読みやすい台本”があると思います。台本を作成する方が10人いれば10通りの形があるくらい、全く同じ台本というのは無く、お見せした台本も一例に過ぎません。
最終的にはクライアントさんの想いが演者に間違いなく伝わることが大事だと思います。皆さんこだわりのポイントがあると思うので、そこが共有しやすいと嬉しいですね。
この記事で声優は普段このような台本を使って演じているのだな~と知って頂けたら… また、今後台本を書く機会がある方にとって、少しでも参考にして頂けたら嬉しく思います! 他にも台本について気になることがある場合は、お気軽にコメントしてくださいね♪
今回も最後までお読みくださりありがとうございました!
それではまた次回お会いしましょう!
明日葉よもぎでした~!!
明日葉よもぎ

(C)明日葉よもぎ
11月20日東京生まれ。さそり座のB型。
ゲーム「アッシュアームズ」「アズールレーン」などに出演中。
世界初のマスコットVtuber「よもちだいふく」声の人としても活動中。
歌ったり動画を作ったり津軽弁を喋ったり、もちもちしたりする人。
Twitter:@ashitaba_yomogi
HP:https://yomogiashitaba.wixsite.com/mysite
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCgzzlWAK-7NLWRWlTaOxWvA/featured
よもちだいふく:https://www.youtube.com/channel/UCu2b-b0Qn94JdfoAsMTpq1A
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