ラノベと『アイアンマン』が繋がる!? ラノベ作家が語る“ラストシーンのカミングアウト”の秘密

 

第1回『アイアンマンがラブコメ主人公? ヒーロー映画がラノベを重版させた!』

はじめまして、小説家の羽場楽人(はば らくと)と申します。
普段はライトノベル(以下、ラノベ)というジャンルで作品を発表しています。

現在は、『ソードアートオンライン』『魔法科高校の劣等生』などが有名な電撃文庫から『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね』という両想いラブコメを書いております。

電撃文庫「わたし以外とのラブコメは許さないんだからね④」表紙 イラスト/イコモチ

このコラムでは、私が影響を受けた映画や漫画などのポップカルチャーを切り口に、ラノベについてお話ししていきます。

さて、突然ですが質問です。
あなたの好きなアメコミのヒーローはなんですか?

私は、アイアンマンが好きです。

『アイアンマン』シリーズの物語は、主人公トニー・スタークが自分で蒔いてしまった種を刈り取る形で進行します。

天才発明家であるトニーは己の傲慢さゆえに命の危機に瀕します。その度にアイアンマンのスーツを強化され、ヒーローとして他者を守るために行動するようになります。その到達点こそ『アベンジャーズ/エンドゲーム』のあの結末でした。

つまり、アイアンマンとは敵以上に、自分の弱さと戦うヒーローなのです。

私がアイアンマンを特に好きになったのは、第1作目のラストシーンです。トニーはスーツを着なければ、普通の人間です。正体を隠した方が安全なのに、彼は自らアイアンマン=トニー・スタークであることを公表します。

彼の目立ちたがりな性格もありますが、同時に他者を守るために戦うヒーローになることを決意した瞬間でもあります。あの期待通りのバラしちゃう痛快さがたまらなく気持ちいいんですよね。

そういう人間臭さとその成長がアイアンマンの魅力的なのだと私は思います。

そんな『アイアンマン』1作目のラストシーンにモロに影響を受けたのが、私の最新シリーズ『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね』(以下、わたラブ)という作品です。

あらすじは、平凡な男子高校生の主人公が高嶺の花のヒロインに告白することから始まる両想い格差カップルのラブコメディー。

実はふたり、周囲には付き合っていることを秘密にしてます。主人公は恋人ができたのを知らないはずの他の女の子達からモテながらも、恋人への好きを一途であり続ける明るく楽しい青春物語です。現在、1~4巻が好評発売中。

(C)羽場楽人

そんなわたラブの第一巻。
最後にトラブルを乗り越え、めでたしめでたし。
だが、作者的になにか物足りない。
さらに気持ちよく物語を終わらせたい。

そう、アイアンマン一作目のラストシーンのようにッ!

かくして、わたラブ一巻は主人公がある理由から最後に秘密をカミングアウトして幕を閉じます。
素晴らしきハッピーエンド。

この判断は大正解。
私の作家人生で初めての重版を経験することができました。おかげさまでわたラブシリーズは現在も続いており、最新四巻も2021年8月6日に発売します。
よろしければ、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

電撃文庫「わたし以外とのラブコメは許さないんだからね④」口絵 イラスト/イコモチ

以上をもって一回目のコラムとさせていただきます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

これからも私が影響を受けた映画アニメ漫画などのエンターテインメント作品を取り上げながら、ラノベに関する楽しいお話をしていきます。

次回もよろしくお願いします。

 

羽場楽人(はばらくと) 

(C)羽場楽人

4月30日生まれ。東京都文京区出身。O型。
2016年12月に電撃文庫より『わたしの魔術コンサルタント』でライトノベル作家デビュー。同作はラノベニュース・オンラインの月間アワード三冠を獲得するなど高く評価された。
2020年から刊行した『わたし以外とのラブコメは許さないんだからね』が大ヒットシリーズになる。現在4巻まで発売中。趣味は映画鑑賞とスニーカー収集。
Twitter:@habarakuto
わたラブPV:https://www.youtube.com/watch?v=8JyirDQSg1Q&list=LL&index=11&t=35s