幼少期のトラウマ間違いなし!? 大人も怖い『クレヨンしんちゃん踊れアミーゴ』がホラーすぎる理由

■クレしん映画で最も怖い『クレヨンしんちゃん伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!』

クレヨンしんちゃん映画シリーズの異色作品

今や多くの人々に愛されている国民的人気アニメ『クレヨンしんちゃん』。毎年映画が公開されていますが、その内容は子どもが大好きなちょっとおバカな下ネタから、クライマックスは大人も感動するような泣ける展開まで本当に家族全員で楽しめる映画ですよね。

そのなかでも異色な作品として名高いのが、映画シリーズ14作目として2006年4月に公開された『クレヨンしんちゃん伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!』です。

アニメ『クレヨンしんちゃん』公式サイトより

タイトルやフライヤーのイラストからは想像できませんが、こちらの作品は子ども向け映画なのに怖すぎるとして話題になりました。一体どこがホラーなのでしょうか?

序盤から早速怖い! よしなが先生が何かを見てしまう…

映画はしんのすけが通うふたば幼稚園の3人の先生が居酒屋で飲んでいるシーンから始まります。仕事の話を中心にいつも通りのやり取りを繰り広げる先生たち。実はこのシーンの背後にもすでに異変が…。

飲み会はお開きになり2人の先生と別れ帰路につくよしなが先生ですが、背後から足音が聞こえてきます。しかし振り向くと誰もいない…。怖くなって走り出し閉まりかけた踏切をギリギリで渡り終えたよしなが先生。通り過ぎていく電車を見届け振り切れたことに安心して前を向くと目の前には「自分」が…。

何者かに追われている焦燥感、響き渡る踏切の警報音、何かが起こっていることを感じさせられるシーンです。この場面は観客だけが知る視点のシーンですが、日常がすでに浸食されているということを登場人物達はまだ気づいていないという不安感がますます恐怖をあおりますね。

風間君のママが化け物に!? 生肉を食べる姿がヤバすぎる…

幼稚園で人が偽物に入れ替わるという都市伝説の噂が回り始めたころ、自宅で風間君がテレビを見ているそばで風間君のママは夕飯の支度をしています。イヤホンで何かを聞きながら体を揺らしてリズムに乗ってご機嫌な様子。一見平和そうなシーンですが、まな板の上の1羽丸々の鶏を包丁でさばきながら舌なめずりをするママ。

風間君がふとママの様子を見ると長く伸びた舌で生肉を食べているところを目撃してしまいます。翌日の幼稚園も偽物の話で持ち切りですが、風間君だけは大好きなママを信じたい気持ちが強く偽物の存在を信じようとしません。その夜ママに抱きつく風間君を抱きしめ返すママの顔は完全に化け物でした…。

生肉を食べるシーンと風間君に見えないところで化け物の顔に豹変していくママの様子。観客は完全に風間君のママは偽物ということに気づいていますが、ママを信じたい風間君がどんどん良くない方向に向かっている様子は見ていてハラハラしてしまい、本当にホラー映画を見ているような感覚に陥ってしまいます。

最終的にママを信じて家に帰った風間君は、ママの背後から現れた自分の偽物から「おかえり、僕」と声を掛けられ入れ替わられてしまいました。

日常が侵されていく! 恐怖を増幅させるシナリオと演出

多くのホラー的要素が散りばめられているこの作品ですが、この2つのエピソードは特にトラウマ要素が強いと言われているシーンです。平和な日常が知らないうちに徐々に浸食されていく恐怖、誰が偽物なのか分からない、実は隣にいる人もすでに偽物かもしれないという疑心暗鬼。

日常が非日常に侵されていくというシチュエーションは、非現実的な設定のホラーよりも後を引きやすいように感じます。映画が終わった後も、自分のママももしかして… というような恐怖を子どもに抱かせるこのシナリオと演出は流石と言えます。

長期にわたるクレしん映画シリーズの中でも異色テイストな作品ですが、怖くても目が離せない魅力を感じること間違いなしですよ。

(文=ザ・山下グレート)