二月の勝者 113話 ネタバレ「十二月の連環」黒木が2つの顔を使い分けていた理由が明らかに!?

■私の手が届く「星」を海に帰すのみ

黒木の思い上がり

2021年7月12日に発売された『週刊ビッグコミックスピリッツ』2021年32号の『二月の勝者-絶対合格の教室-』。第113講「十二月の連環」では、黒木が無料教室“スターフィッシュ”のクリスマスパーティーに参加し、桜花ゼミナールの生徒たちには「クリスマスはお預け」と伝えていた理由が明らかとなる。

「ビッグコミックBROS.NET」公式サイトより

黒木はクリスマスパーティーの途中で、“「本職」は桜花ゼミナールの講師であり、今の時期が正念場である”と佐倉に伝えて帰ってしまう。その後を追い掛ける佐倉。

黒木は「これから私が話すことは、単なる独り言です」と前置きして、過去のエピソードを話し始めた。

塾に行けない子どもたちの口コミが広がり、次第に生徒数が増えていき誕生した無料教室“スターフィッシュ”。黒木自身も無料教室を続けていくことに自信があり、「社会貢献している」という気持ちになっていたが、「そんなのは思い上がりだった」とこぼした。

数年前のクリスマスイブに、フェニックスの冬期講習を終えて帰ろうと思っていたところに“スターフィッシュ”で勉強を教えている男子生徒からの着信履歴が残っていることに気づく。生徒は以前黒木が“いつでも俺んちに自習しに来いよ”という言葉を思い出し、電話を掛けたという。

黒木は生徒を自宅に招いて、クリスマスパーティーをおこなうことに。チキンやケーキを食べたり、黒木が買ってきたプレゼントに喜ぶ男の子。「クリスマスにご馳走食べてプレゼントもらうとか、そういうのって、テレビドラマの中の出来事だと思ってたから、俺までドラマの中の人になったみたいだ!」と笑顔を見せた。

そこで黒木はクリスマスに豪華な食事やプレゼントが用意されていることが当たり前ではないことを知る。貧困な家庭の生徒が集まる無料教室“スターフィッシュ”だけで、毎年クリスマス会を開催しているのはその経験からだった。桜花ゼミナールの生徒には「クリスマスはお預け」と言っていたことに、疑問を感じていた佐倉は納得する。

念押しの独り言

夜中に酒を飲んで騒ぐ大人がいる家の中学生や、大家族の兄弟姉妹の世話を任される高校生たち。こんな複雑な家庭事情は、誰にも話せない。親が仕事を掛け持ちしたりして大変なことも知っているから生徒たちも不満を口にすることを我慢してしまう。だから本当に困っている子どもたちが見つかりにくい、と黒木は語る。

桜花ゼミナールの生徒たちも“スターフィッシュ”の生徒たちも、家庭の経済面に違いはあるものの根底は変わらない。アメリカの自然科学者であるローレン・アイズリーのエッセイの言葉を用い、生徒たちをヒトデに例えて「私の手の届く範囲だけでも、拾い、海へ投げて返すのみ」と生徒たちへの思いを伝えた。

桜花ゼミナールの生徒たちに対しては冷たいイメージの黒木だったが、ただひたむきに生徒たちと向き合っていたことが分かった。イメージが一変した黒木がどう生徒たちと受験を乗り越えていくのか楽しみである。

(文=ももヤシ健)