ベテランボカロPの制作環境を公開! アイロン台から始まったオワタPのデスク回りとは
第九回「オワタPは昔、ノートパソコンをアイロン台に乗せて作曲していました」
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「はい、みなさまどうもこんにちは。オワタPこと”ガルナ”です」
さて、前回の最後でも触れた通り、今回は私がどのような環境で楽曲を作っているのか。あるいは、ゲームをプレイして配信をしているのか。どういう点について注意して環境を構築しているかについて、お話ししたいと思う。
私はキーボードを入力する時は「かなうち入力」派である。もともと幼い頃に、親が所持していたワープロをおもちゃとして遊んでいたのだけれど、当然ローマ字などは知らなかったので、物心がつく頃にはすっかりすべてのキーボード配置を「かな」で把握していたらしい。そして、小学生の頃に義務教育の一環で習ったローマ字などは不要だと毛嫌いし、今に至るまで、徹底してかなうちを行っている。もちろん、この原稿もかなうちである。ローマ字入力を覚えなかったせいで、中学英語で躓いて、今でも満足に日常英会話もできないような英語能力になってしまったような気がしないでもない。
最近のおしゃれなノートパソコンなどはキーボードがそもそもひらがなの記載がなく、英語オンリーというものもある。いくらブラインドタッチでかなうちが出来るとはいえ、タイプミスが増えるのは嫌なので、私はキーボードを選ぶ時は必ずひらがな表記があるものを選んでいるが、このように、身の回りの作業環境を構築するにあたっては、人によって異なるものだという前提で話を進める。万人への正解などはない。当人が使いやすいかどうか、それが決め手といっても過言ではない。
もちろん、見た目のカッコよさや可愛さを求めてもいい。ゲーミングと言えば七色に光る、みたいな新たな定義が生まれるものもあるが、もちろん室内の照明が七色でも構わないだろうし、視認性が良ければそれでいいのだ。それが正解だ。
金銭面の話をしよう。私は拙作「パラジクロロベンゼン」を作るまでは、スペックの決して高いとは言えないノートパソコンで作業をしていた。OSはWindows Vista、HDDの容量が80GBしかなかったといえば、なんとなくわかるだろう。電子キーボードも、私が3歳の頃には実家に安置されていたYAMAHAのクラビノーバからMIDI端子を接続して、移動式のアイロン台にノートパソコンを置いて作曲していたのだから、当時の自分はそれなりに苦労をして作曲をしていたのだとよくわかる。実際、よくやっていたと思う。
当時大学生だった私は、自分専用の部屋はなかった。賃貸の和室の床の間を改造して、自分のスペースがあったが、大学の後半になって姉が実家を出て行ったことによって、初めて自分一人の部屋が与えられた。そして、ボカロPとして手に入れた印税や同人CDの売上金などを使って、ようやくデスクトップパソコンを購入した。今になって思えば、そこから私の快適な環境作りは始まったのだろう。
少しずつ、今まではパソコン本体の容量が足りなくてインストールさえできなかった音源を購入した。音源だけで500GBもあるようなソフトもあるから、当時パソコンの全部の容量が80GBという状態で作曲していた私にとって、作曲の世界は一気に広がったが、逆に今までの環境にも慣れ親しんでいたせいで、突然の領域拡張に戸惑い、今でも十分に使いこなしているのかと問われれば、正直微妙である。
所詮は趣味で続けている作曲活動、自分の身の丈は知っている。こんなもので十分なのだと、今でも数年前に購入した音源は使い続けているし、滅多なことでは新しい音源を購入することはない。ただ、ハードについては耐用年数もあるから、適宜劣化が見えたら予防保全として更新していた。先日も、2012年製のゲームのキャプチャーボードを最新のものに更新したばかりだ。そう考えると、物持ちは十分に良い。
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、対外的な活動が全面的に中止となった。だが、文化庁からの補助金の申請制度などがあり、作曲や配信の環境を再構築するにあたって、大いに活用させてもらった。経済をどんどん回さないと企業がつぶれてしまう。音楽のニーズは決して多いとは言えない。なんとか企業へ投資すべく、私も経済をまわすことに尽力した。在宅で行う作業が増えたのだ、快適な環境を構築するなら、今しかなかったのではないだろうか。そうやって出来上がったマイスペースが、これである。

(C)ガルナ(オワタP)
見た目はとてもシンプルだ。見えていない部分はスチールラックを2基左右に組み立てていて、その上に板を置いて机にしている。奥には配線隠し用のカバー、またモニターアームなどを用いて、無線式のキーボードやマウスを配置して、使わないときは書類などが読めるように、なるべく机の上を広く使えるようにしている。
写真左側には作曲の時に使う電子キーボード、また、配信などで使うミキサーやマイクなどを配置している。ピアノを弾きながらでも、パソコンでゲームをしながらでも、フレキシブルに対応できる環境だ。もちろん、ホームデバイスを導入しているので、声に反応して照明や空調のオンオフなどができるようにしている。
もちろんこれで完成だとは思っていない。まだまだ不便なところはある。隣の部屋が寝室だが、音漏れの心配もある。今後はこの壁面に吸音材でもつけようかと思っている。
かつてはアイロン台から始まった劣悪環境、ボカロPを14年も続けていればここまで進化する。この記事を読んだ方も、自分への投資だと考えて、ぜひ作業環境をより自分好みに快適に変化させてみては、いかがだろうか。
さて、今回の宣伝だが、写真に見えている機材などについては、以下のページでまとめているのでぜひ見てほしい。
⇒がるなん.com
※ページ中盤の「■作曲環境」「■実況環境」欄をご確認ください。
このページは前回の記事でも紹介したが、実際の機材についてはリンクも貼っているので、私の環境をまねしたい方はぜひ参考にして欲しい。
今回はここまで。機材についての話は止まるところを知らないが、次回は配信環境以外の住環境についても語ろうと思う。いよいよ、私の本業の一面を紹介することになるので、ぜひ見てもらいたい。
それでは。
つづく
ガルナ(オワタP)

(C)ガルナ(オワタP)
1987年12月31日生まれ。東京都出身。山羊座のB型。
代表楽曲「トルコ行進曲 – オワタ\(^o^)/」「パラジクロロベンゼン」「リンちゃんなう!」など
Website:https://garunan.com
Twitter:@tomatowt