ある日突然メロディーと一緒に口から零れ落ちたフレーズ… アニメ『花咲くいろは』OP主題歌「ハナノイロ」制作までの苦労をnano.RIPEきみコが語る
nano.RIPEきみコが語るアニメ楽曲制作の裏側「第10回」
日刊ビビビをご覧の皆様、こんにちは。
nano.RIPEのきみコです。
娯楽のない部屋に籠もり、絵コンテと向き合う日々を経て、遂に「ハナノイロ」の手掛かりを掴んだ2010年春のきみコ(姉夫婦の家に居候中)。
今回は、その手掛かりから楽曲が完成するまでを綴ってゆきたいと思います。

(C)ハイウェイスター
『涙の雨が頬を叩くたびに美しく』
曲作りにおいて、いわゆる “ 降りてきた ” という感覚はあまりないあたしですが、このフレーズばかりは“ 降りてきた ”と言っても良いかもしれない。
それくらい唐突に、ある日突然、メロディーと一緒に口から零れ落ちたのです。
そこからはとてもスムーズに進みました。
『花咲くいろは』というタイトルを聞いた時から花の描写を取り入れるつもりだったので、そのイメージでサビを作り、Aメロ、Bメロと書いてゆきました。
主人公の緒花ちゃんをはじめ、登場人物たちが迷い悩みながらも真っ直ぐに進んでいく姿が印象的なシナリオだったので、そのがむしゃらさは絶対に表現したいと思いつつ、だけどちゃんと希望のある歌にしよう、と。
緒花ちゃんたちに比べるともうすっかり大人になったつもりでいましたが、シナリオや絵コンテの力か、そもそも人間って本質はそんなに変わらないのか、思春期ならではの葛藤や焦燥が今もまだ自分の中にあることを書きながら感じました。
新しい暮らしの中で足掻く緒花ちゃんの姿が、半年後にデビューを控えた自分たちと重なったのかもしれません。

(C)ハイウェイスター
『何回だって間違えるけど 終わりはしないなら 笑ってたいな』
希望のある歌、と言っても答えを出すことはしたくなかったので(というか未だに答えのある歌が書けたことはないのですが)、こんな風に願いを込めた小さな光を散りばめた歌になりました。
あたしの歌詞の主人公はいつもどこか未完成で、それが人間らしくてとても愛おしいのです。
「ハナノイロ」というタイトルは最後の最後に付けました。
もともとは「花の色」という漢字表記だったのですが、当時の偉い人のアドバイスでカタカナに。
ここだけの話、最初はしっくりきていなかったのですが、時間が経つにつれカタカナで良かったな、と思うように。
漢字表記よりも名詞感があって、いろいろな受け取り方ができる気がするのです。
漢字、カタカナ、ひらがな… このあたりも日本語って本当に面白いし奥深い。
『何度となく夜を越え 昨日より空の方へ たまに枯れながら』
あれから10年。
時折枯れたりしながらも、nano.RIPEはまだ上を向いて生きています。
次回は、テレビアニメ『花咲くいろは』第2期オープニング主題歌「面影ワープ」についてお話したいと思います。
きみコ

(C)ハイウェイスター
3月12日生まれ、千葉県出身。
ロックバンド nano.RIPEのVo.とGt.として
アニメ「花咲くいろは」「のんのんびより 」「食戟のソーマ」など数々の作品の主題歌やキャラクターイメージソングなどを手掛ける。
Twitter:@nanoripekimiko
instagram:@nano.ripe
バンドHP:http://nanoripe.com/