nano.RIPEきみコが居候!? アニメ『花咲くいろは』OP主題歌「ハナノイロ」制作の裏側
nano.RIPEきみコが語るアニメ楽曲制作の裏側「第9回」
日刊ビビビをご覧の皆様、こんにちは。
nano.RIPEのきみコです。
早いもので、このコラムがスタートして4カ月。
『のんのんびより』シリーズの楽曲については一旦完結となりました。
先月の原稿を書きながら「次はどの作品について書こうかな?」と考えかけてすぐ、ぼくらの原点である『花咲くいろは』が浮かびました。毎年、春の手前で思い出す大切な作品。
ちょうどこの4月より再放送がスタートしていることもあり、今月からは『花咲くいろは』について綴ってゆこうと思います。
まずはやっぱりこの曲、テレビアニメ『花咲くいろは』第1期オープニング主題歌「ハナノイロ」について。

(C)ハイウェイスター
『花咲くいろは』は2011年4月より放送スタートしたテレビアニメで、株式会社P.A.WORKSの10周年を記念した作品でした。
P.A.WORKSとして初の完全オリジナル作品。
そこにデビューしたての新人バンドであるぼくらを使っていただけるということで、当時は嬉しさよりも不安の方が大きいスタートでした。
主題歌の制作は、たしか2010年の春くらいから始まったと思います。
nano.RIPEのデビューは2010年9月。つまり、デビュー前から水面下で着々と進行していたお話だったのです。今振り返ると、とても大きなチャンスをいただいたんだなあと思うけれど、当時はただただ必死でそんなことにも気が付けませんでした。
初のタイアップ作品。
これまでずっと自分が歌いたいことを好きなように書いてきたぼくらが初めてテーマというものを与えられて書く曲に、最初は少し戸惑いました。
アニメのための曲、だけど、nano.RIPEとして発表する曲。
一体どちらにどのくらい寄せるべきなのか、何が正解なのか、そんなことをずっと考えていました。
何日間かの逡巡ののち、ヒトツの答えに辿り着くのですが、この時に出した答えは今も変わらずにあたしの真ん中にあります。
それは、「作品と自分の共通点を探すこと」。
もちろん、アニメのための曲にしたい。けれど、どこか他人事のように歌いたくはない。
アニメの放送が終わっても、その先もずっと自分の気持ちとして歌い続けられる曲にしたい。
これは、その後どんな作品とのタイアップをいただいても、必ず意識している部分です。

(C)ハイウェイスター
当時、デビューは決まっていたものの音楽の仕事はまだまだ少なく、千葉に住む姉夫婦の家に居候させてもらっていたあたし。
新婚夫婦の建てたばかりの家に住み(なんなら建てる前から住む気満々で自分の部屋の壁紙を選び)、テレビも何もない部屋に籠もって曲を書いていました。
義兄から「きみコちゃんはあの娯楽のない部屋で毎日何をしているの…?」と不思議がられるほど、来る日も来る日も集中して曲の手掛かりを探していました。
『花咲くいろは』はオリジナル作品なので原作はなく、いただいたシナリオや絵コンテを読み込む日々。
絵コンテの段階ですでにココロを動かされるシーンがたくさんあり、実際にアニメ化されたらそれが何倍にもなるんだろう、と想像してはワクワクしていたのを今でも覚えています。
今よりもずっと1曲を作るのに時間がかかっていたけれど、苦しいよりも楽しく、この時の経験があって今のあたしがいる、と言っても過言ではないかもしれません。
そうしてある日、零れるように出てきたフレーズが『涙の雨が頬を叩くたびに美しく』だったのです。
次回は、遂に手掛かりを見つけた「ハナノイロ」が完成するまでを書いてゆきたいと思います。
きみコ

(C)ハイウェイスター
3月12日生まれ、千葉県出身。
ロックバンド nano.RIPEのVo.とGt.として
アニメ「花咲くいろは」「のんのんびより 」「食戟のソーマ」など数々の作品の主題歌やキャラクターイメージソングなどを手掛ける。
Twitter:@nanoripekimiko
instagram:@nano.ripe
バンドHP:http://nanoripe.com/