「オワタPこと“ガルナ”です」“トルコ行進曲”のボカロPが2つの名前を持つ理由
第1回「はじめまして。ボカロPのガルナ(オワタP)です」
「はい、みなさまどうもこんにちは。オワタPこと“ガルナ”です」
ボクが、YouTubeLiveやニコニコ生放送で配信をする時の第一声は、いつもこうだと決めている。特に理由はない。ただ、こう喋り始めて、もう10年以上になる。
この記事を見ている人の中には、ボクと同じようにインターネット上で雑談配信をしている人もいるだろう。だけど、恐らくは見るだけという人が大多数だと思う。そして、生配信を盛り上げるためにコメントをしたり、あるいは投げ銭機能などを使って配信者を金銭的に支援する人もいるのだろう。ならば、その人達も、ボクと同じく必ず持っている筈だ。ユーザー名を。
ボクは、中学生の頃から「ガルナ」と名乗っていた。なんてことはない、ただ国民的なRPGゲームの攻略掲示板を見かけて、そこで書き込むときに名前が必要になって、たまたまそこにあったゲーム上の地名から拝借した、それだけのことだ。今現在、ボクは33歳なので、もうかれこれ20年以上、この名前を本名とは別に名乗っていることになる。
みんなだってきっとそうだ。一生懸命考えた名前の人もいるだろうけれど、だいたいは本名をもじったあだ名だったり、あるいはその辺にたまたまあった物体を名乗ったり、中には人から名付けられた、なんてこともあるのかもしれない。その名前を、Twitter、FacebookなどのSNSで使ったり、あるいは通販サイトのニックネームとして使っているのだ。
ボクが「オワタP」と呼ばれ始めたのは、ボクが20歳の時だった。決して自分から名乗り始めたのではない。たまたまその時にニコニコ動画に「トルコ行進曲 – オワタ\(^o^)/」という楽曲を投稿した、それだけの理由だった。
このPというのは「プロデューサー」の略称らしい。もともとはアイドルマスターというゲームのプロデューサーがPと呼ばれていて、それならボーカロイドキャラクターを歌わせている作者はボカロPだろうという流れで、当時は色々な音楽家が「○○P」と呼ばれていた。ボクみたいに誰かにつけてもらった人もいれば、自分から名乗り始めた人もいる。それこそ最初は誰が名付け親になるか、なんて論争も視聴者の間であったのだろう。ボクも今となっては、3才の娘がいる名付け親だ。名前を考えるのは、確かに楽しい。
話が逸れてしまった。まぁ色々あって、ボクは「オワタP」とみんなから呼ばれることを受け入れた。別に元々使っていた「ガルナ」という名前を捨てたわけではないが、イベント会場などに顔を出すと、みんなからは「オワタP」「オワタさん」などと呼ばれた。はじめは違和感があったものの、そんなものはすぐに慣れた。ボーカロイド界隈で活動する時は、この名前で統一した。この名前で商業CDも出したし、小説も出した。音楽の仕事をする時も、ずっとそのように名乗った。
でも、ある時から音楽以外の活動もすることが増えて「ガルナ」と「オワタP」どちらの名前もそれなりに名前が売れた。混乱するファンもいれば、どちらの名前で呼べばいいかわからない友人も増えてきた。今更統一することなんかできないくらい、この2つの名前は強くなってしまった。
仕方がないから「ガルナ(オワタP)」表記で統一して、名乗る時も両方の名前を使うことにした。仕事用の名刺も、そのように作り替えた。もう、オワタPと呼ばれ始めてから間もなく13年目になる。どちらもボクにとっては、大切な名前なのだから。
この記事を読んでいるみんなも、本名以外の名前があるはずだ。となると、キミはいったいどのくらいの期間、その名前を使い続けるのだろうか。5年? 10年? それとも、もっと長い時間? だけど、キミがその名前を使い続ければ続けるほど、きっとその名前にはより愛着が湧くだろう。きっかけなんて、些細なものだ。その名前をどう育て上げるかは、今のキミが決める話なのだから。
……とまぁ、ここで終わればとても良い話で終わるのだろう。だが、残念ながらそうはいかない。ボクは音楽家なので、音楽で稼いでいかなければならない。引き続きボクがこの場でこのようなエッセイを書き続けるかどうかは、みんながこの記事を読んでどのような感想コメントをくれるかで決まるといっても過言ではない。
というわけでここからはガルナ(オワタP)による露骨な宣伝だ。まぁ、読み飛ばしてくれても構わないが、もう少しだけ付き合ってくれるとボクは嬉しい。
本文中に登場した「名刺を作り替えた」という話に関連して、実は名刺を模した封筒に音楽のダウンロードカードを封入し「ガルナ(オワタP)」のサインを入れた音楽アルバム「ツギハギ-大地の章-」を通販サイト「BOOTH」で取り扱っている。興味がある方は、ぜひこの機会に手に入れて欲しい。

(C)ガルナ(オワタP)
このコロナ禍で、こういった作品を頒布するイベントは軒並み中止となった。イベント収益が下がった音楽家を助けると思って、みなさまに於かれましてはどんどん経済をまわして支援することを提唱する。
せっかくなので、次回はコロナ禍でボカロPはどのように変わったか、ボクの体験を踏まえて語ってみようと思う。ぜひ、次回も見てもらいたい。きっと次回の冒頭でも、ボクはこう言うのだろうね。
「はい、みなさまどうもこんにちは。オワタPこと“ガルナ”です」
ガルナ(オワタP)

(C)ガルナ(オワタP)
1987年12月31日生まれ。東京都出身。山羊座のB型。
代表楽曲「トルコ行進曲 – オワタ\(^o^)/」「パラジクロロベンゼン」「リンちゃんなう!」など
Website:https://garunan.com
Twitter:@tomatowt