アドリブは禁止!? 「山田邦子の門2020」で体験した綿密な稽古方法を公開

【河原田巧也の「ブタイウラ!」】第6回~「山田邦子の門2020」演出の秘密~

こんにちは。俳優の河原田巧也です。この記事では、僕がリアルに感じた演劇の舞台裏を隔週で語っていきたいと思います! 今回は12月に上演した「山田邦子の門2020 ~クニリンピック~」について語っていきます!

(C)河原田巧也

本作は山田邦子さんの還暦記念公演。2019年に第1弾を上演、その続編となります。
元々は2020年6月に上演予定でしたが、コロナ禍により延期。クラウドファンディングで資金を募り、無事に12月公演を果たす事が出来ました。

物語は、様々な困難を乗り越え、遂に立ち上げたプロレス団体「武蔵ガールズ」。その1年後の話。
未知のウイルスによる興行中止、緊急事態宣言、団体解散。この苦しい状況をおバカなキャラクター達が乗り越えていく、まさに“今”を取り入れたエンターテイメントコメディです。

(C)河原田巧也

本番アドリブ禁止の現場
アドリブ禁止と聞いて「厳しい現場」とイメージする俳優は多いかも知れません。
ただ一口にアドリブと言っても、何か想定外のことが起きた場合のアドリブはもちろんOK。それはフォローです。
では、ここで言われているアドリブとは何か? それは「稽古でやっていないことを演出家の許可なく行うこと」
とても当たり前のことを言ってますが、実はこの当たり前のことが破綻するパターンは多いのです。

ちなみに僕はアドリブ否定派ではありません。面白いものは面白いですし、毎日観劇している方にとっては楽しい。
おそらく演出の水木英昭さんも否定派ではないと思います。ただ自身の現場ではダメなだけです。
一体どういう事なのか? それは水木さんの作る作品、稽古環境にあります。

めちゃめちゃ細かく稽古
水木さんの現場は明確に、段階に分けて行われます。

1.大まかなシステムを理解してもらうための立ち稽古。
序盤の稽古です。この段階では「どういう出来事が起こるか」「それによる登場人物の共通認識」など、こと細やかにルール付けをしていきます。

2.芝居のやり取りを明確にする稽古。
中盤の稽古です。キャラクターの感情が客席に伝わるよう、とにかく細かく稽古します。セリフの当て方から、リアクション、キャラクターの感情整理、どういう事件が起こって笑いに繋がっていくかを徹底的に、役者が完全に理解するところまでやっていきます。一言二言セリフを喋ったら止めて「ここは〇〇が~~」と説明をして、少し前のセリフから再開する。これを全てのシーン丁寧にやっていきます。とにかく集中力との戦いです。
こう説明すると指示されたことをただやっているような印象を受けるかも知れませんが、役者の個性、持ってきたプランはとても尊重してくれます。キャラクターも当て書きなのでズレも少ない。
この段階で新しく生まれる笑いはめちゃめちゃ多いです。

3.芝居全体の流れに落とし込んでいく
細かく付けたものを今度は大きな枠組みの中に落とし込んでいきます。ちなみに休憩時間、稽古初日から役者同士で「ここのシーンは~~」という話し合いが最終稽古まで行われているので、毎日ブラッシュアップしたものを当てていくことになります。
その上で通し稽古やシーン稽古をして、方向性が変わってしまったところはもう一度 【2.】の稽古をします(これがすっごい悔しい笑)
よくある例は<気持ちが昂ってセリフを叫んでしまう>こと。音楽を大音量でガンガン鳴らすエンタメ作品においては問題ないと思うのですが、セリフのやり取りで笑いを取る手法の作品においては致命的です。
叫ぶ=主張ばかりが目立って受け入れ体制がない。人のセリフが聞けなくなってしまうんです。相手もそれに乗ってしまうと、最終的に叫んでばかりの怒鳴り合いの芝居になる。20代前半の頃、僕が一番怒られたパターン。笑

新喜劇などを見るとよく分かるのですが、ほとんど怒鳴っていません。

少し逸れましたが上記の稽古に加え、毎日リハーサルを行います。
この現場でのリハーサルとは「歌、ダンス、殺陣を毎日稽古初めに返すこと」
相当な例外がない限り(役的に)全員どれかはやります。なので稽古休みはほとんどありません。笑

(C)河原田巧也

「リハーサルで出来ない役者は本番でも出来ない」
役者はリハで100%を出せるように毎日調整をしてきます。

役者の不安をゼロに
徹底的に稽古を繰り返し、全員で共通理解を高めていく。笑い一つ一つが繰り返し洗練させたものなのです。
何度も何度も稽古で積み重ねて「これならいける!」というところまで向き合ったからこそ、水木さんは思い付きのアドリブはして欲しくないのだと思います。
役者としても、お互いの成功と失敗をさらけ出し合っているからこそ、純粋な勝負がしたくなるのです。

水木さんは、顔合わせから「分からないことは全部聞いてください。全てに答えます」と言います。
もし壁に直面しても、その場で稽古を中断して一緒に悩んでくれる。
私たちはその姿勢を間近で見ているからこそ、自信を持って舞台に上がれるのです。

(C)河原田巧也

 

(C)河原田巧也

河原田巧也(カワハラダ タクヤ)
1991年5月6日生まれ。東京都出身。牡牛座のO型。
舞台『弱虫ペダル』シリーズの泉田塔一郎役や、ミュージカル「黒執事」シリーズのフィニアン役として活躍
Twitter:@takuminar

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