「のんのんびより」主題歌に一人称が使われていない理由… nano.RIPEきみコの初出しエピソード
nano.RIPEきみコが語るアニメ楽曲制作の裏側「第4回」
今回は、「なないろびより」のこだわりポイントやレコーディングについて書いてゆきたいと思います。

(C)ハイウェイスター
前回のコラムに書いたように、「のんのんびより」主題歌のお話をいただいたぼくら。
ところがぼくらは監督さんのイメージと真逆の、登場する少女たちのワイワイとした日常にフォーカスした元気いっぱいな曲を書いてしまったのです。
そこで、もう一度のチャンスをもらい、改めて曲と共に歌詞についても見直しました。
そこで気がついたのが、他の作品ではよくある「登場人物の誰かの視点で描く」というのは今作に限っては違うな、ということ。
まず、誰が主人公ということでもない「のんのんびより」の世界、そして、大きな事件が起こったり急に成長したりするわけではない、普通の少女たちの普通の日常。そのどこか一部を切り取るということは、なんだかとても乱暴な行為のように思えたのです。
でも、じゃあ、この歌詞は一体誰の目線?
あたしの出した答えは『視聴者』でした。
観ているひとの日常に溶け込む作品。
きっと誰もがどこか懐かしい気持ちになるこの世界に、曲を介してみんなのことも入れてしまおう、という作戦。
現実世界のいろいろを抱えたあなたが、深夜、部屋でひとりテレビを付けて「のんのんびより」の世界に潜る。
その時だけはやさしい気持ちになれるよう、この物語の一部となれるよう。
たとえそれが、息継ぎしたら消えてしまうような儚い時間だとしても。
そんな願いを込めながら書いてゆきました。
そういうこともあって、nano.RIPEの「のんのんびより」シリーズの曲たちには一人称が使われていないのでした。
タイトルの「なないろびより」は歌詞を書き進めていく中で付けたのですが、閃いた瞬間「これしかない!」という気持ちで一切悩まなかったことを覚えています。まさかここから「ひらがな7文字縛り」になるとは思わなかったけれど、それも含めて我ながらよく思い付いたなーと満足しています。

(C)ハイウェイスター
そんな「なないろびより」レコーディングはたしか2013年の3月頃だったと思います。あまり写真も残っていないのですが、多分この時。
きみコ作曲なこともあって、一層やる気がある感じ。
ササキジュン曲のときはあまり口出しせず大人しくしていることが多いのですが。
反対に、なんとなくササキジュンが大人しめな印象の一枚。
「メンバー内コンペ」といえど、本気の勝負。負けるとやっぱり悔しいもの。
(この時のササキジュンがそんな気持ちだったかはさておき)
あたしは今も、作曲においての一番のライバルはササキジュンだと思っています。

(C)ハイウェイスター
自分の曲はアコギを弾きます。
あたしは椅子に座ってギターを弾くことが苦手で、レコーディングは床にあぐらスタイル。
初めて行くスタジオではよく驚かれるのですが、あまりいないのかな…
そんなこんなを経て、すべての始まりとなる「なないろびより」は完成したのでした。
初めて話すエピソードばかりだった気がする今回。
あたしもキオクを辿りながらいろいろなことを思い出しました。
前回の「つぎはぎもよう」と今回の「なないろびより」
繋がる部分のたくさんある曲なので、是非両方聞いて答え合わせしてみてくださいね。
次回はテレビアニメ第2期「のんのんびより りぴーと」オープニング主題歌「こだまことだま」についてお話してゆきたいと思います。
きみコ

(C)ハイウェイスター
3月12日生まれ、千葉県出身。
ロックバンド nano.RIPEのVo.とGt.として
アニメ「花咲くいろは」「のんのんびより 」「食戟のソーマ」など数々の作品の主題歌やキャラクターイメージソングなどを手掛ける。
Twitter:@nanoripekimiko
instagram:@nano.ripe
バンドHP:http://nanoripe.com/