初アニメ化作品の楽曲制作に潜む“落とし穴”… アニメ『のんのんびより』初代主題歌はこうやって生まれた

nano.RIPEきみコが語るアニメ楽曲制作の裏側「第3回」

日刊ビビビをご覧の皆様、こんにちは。
nano.RIPEのきみコです。

1月より連載をスタートさせていただきましたが、想像以上にたくさんの反応をいただけてとても嬉しく思っています。
聴いてくれる人あっての音楽、読んでくれる人あってのコラム。
みんなが喜んでくれるようなものを書いてゆけたら良いなと思います。

さて今回ですが、せっかくなので前回の「つぎはぎもよう」に繋がるよう『のんのんびより』シリーズでゆきたいと思います。

すべてはここから始まった、テレビアニメ1期「のんのんびより」
オープニング主題歌「なないろびより」についてのアレコレを。

(C)ハイウェイスター

「のんのんびより」は2013年の10月より放送スタートいたしました。
なので、ぼくらが主題歌のお話をいただいたのはその1年前くらい、だったかな。
これはきっとどの作品にも共通して言えることだと思いますが、初のアニメ化ということは主題歌を書く際に頼りにするのは原作のみ。
いつも以上に原作を深く深く読み込むことになるのですが、ここにヒトツ落とし穴が。
原作を読んでの感じ方というのは、当たり前に千差万別。
自分の感じたものをそのまま曲にしてしまうのが必ずしも正解ではないのです。

事実、この時ぼくらはやらかしてしまいました。

当時、主題歌のお話をいただくと「メンバー内コンペ」と称して、あたしきみコが1曲、ギターササキジュンが1曲、計2曲を提出し、制作サイドに選んでいただくというスタイルだったのですが、そのどちらもが監督のイメージするものと大きくかけ離れていたのです。

曲を提出した数日後、ぼくらはアニメーション制作会社であるSILVER LINK.本社に呼ばれました。
会議室で監督に言われたコトバは今も覚えています。

「とても良い曲ですね、明るくて、キャッチーで。ただ… 別の作品だったら喜んで使いたいところなんですが、この作品に関してはちょっと違うんです… すみません…」と。

そう、あたしもササキジュンも、登場する少女たちのワイワイとした愉快な日常の方にフォーカスしてしまい、元気いっぱいな曲を書いてしまったのです。
今思えば、ちがう、絶対にちがう、この世の常識! くらいに思うけれど、オープニングという先入観も相まって『明るい曲』が合うように思ってしまったのです。

そこで、前回のコラムでも書いたように「チャンネルを変えられてしまったら負けだけど、観ながら寝てしまったら勝ち」という監督のイメージを聞き、いわゆるリテイク、もう一度いただいたチャンスの中で書き上げたのが「なないろびより」でした。

余談ですが、同時に提出したササキジュン曲は「なないろびより」のカップリングに入っている「きせつの町」という曲。
つまり、この曲も世界観はしっかりと「のんのんびより」なので、是非合わせて聴いてみてくださいね。

次回は、「なないろびより」のこだわりポイントやレコーディングについて(レコーディングに関してはキオクを丁寧に遡らなくちゃ…)書いてゆきたいと思います。

きみコ

(C)ハイウェイスター

3月12日生まれ、千葉県出身。
ロックバンド nano.RIPEのVo.とGt.として
アニメ「花咲くいろは」「のんのんびより 」「食戟のソーマ」など数々の作品の主題歌やキャラクターイメージソングなどを手掛ける。
Twitter:@nanoripekimiko
instagram:@nano.ripe
バンドHP:http://nanoripe.com/

 

\30日間無料で楽しめる!/