演出助手不在、本番まで2週間… 河原田巧也が明かす「RANPO chronicle 怪人二十面相」の裏側

【河原田巧也の「ブタイウラ!」】第5回~演出家の裏側~

あけましておめでとうございます。俳優の河原田巧也です。この記事では、僕がリアルに感じた演劇の舞台裏を隔週で語っていきたいと思います! 今回はトライアルではなく、初の演出として携わった「RANPO chronicle 怪人二十面相」について話していきたいと思います!

まず写真の「RANPO chronicle 怪人二十面相」。
これは2018年に桃原秀寿さん脚本・演出で上演された作品です。
それを新たに演出を変え、再度上演したのが今回の怪人二十面相。脚本は同じなので、再演に近いイメージですね。

(C)河原田巧也

~演出助手がいない現場~
まず今回作品を作る上で一番問題だったのが、顔合わせから本番まで2週間しかないこと、そして演出助手がいないことでした。
舞台作品において<演出>という名が付く役職は3つあります。

クレジット順に、最初が<演出家>。次いで<演出補佐>。補佐は決定権こそないものの、演出家と肩を並べるポジション。演出家が仕事で不在の時など、補佐がいると大いに現場は回ります。2人目の演出家です。
そして稽古の進行において最も重要なのが<演出助手>。演出助手の仕事は稽古スケジュールの組み立てから、各セクションへの連絡、現場のタイムキーパー、代役などなど。演出家が動きやすいよう、かつ現場が回るよう努めるポジション。
若手の演出家には熟練の演出助手を付ける。これが最も効率の良い、演劇界のセオリーなのです。

しかし今回は感染予防対策のため演助(演出助手)を付けないことになりました。

演出助手のサポートがない中、ほとんど1人で現場を回していくことになります。
今回僕が行った仕事は以下の通りです。

・稽古スケジュールの組み立て
・舞台監督との打ち合わせ、小道具の発注
・ダンス振付、殺陣師との打ち合わせ、振付稽古の日程調整
・作曲家との音楽打ち合わせ、曲の発注、楽曲のチェック
・照明打ち合わせ
・衣装さんとの打ち合わせ、衣装合わせ
・小道具の買い出し
・芝居稽古、音出し、ダメ出し、修正作業、ほか

どこか1つに集中すると、他の作業が遅れてしまう。
ノウハウをしっかり身につけることは作品を深く理解することと同じくらい重要なことなのだと今回痛感しました。

~イメージの共有~
現場にいる様々な方とのコミュニケーションが必要な舞台ですが、作曲家(音楽家)とコミュニケーションをとれる俳優は多くないかも知れません。
何故なら、作曲家のほとんどが自宅や事務所で仕事をしていて、あまり現場に来れないからです。
なので僕は、他の現場で作曲家が打ち合わせをしている姿を知りませんでした。

初めてとなる作曲家との打ち合わせは、稽古場での芝居の話からスタートします。
どんなシーンになっているか? 稽古場はどんな雰囲気か? 初めての演出はどうか?
向かいたい方向、芝居のニュアンスなど一通り話したところで打合せは終了。

「話してみて何となくわかってきたので、あとは曲の入れどころ、どんな曲かざっくりで良いので連絡ください」と。

ちなみにこちらが僕が作曲家に送った内容です(本当にざっくりしてます笑)

(C)河原田巧也

本来であれば「○分○○秒の尺でセンシティブな~」と具体的に説明できる方がいいのですが…。笑
しかしイメージを共有する作業は結果的に大きな効果を生みました。

ラストの立ち回りの稽古中、仮でオープニング曲を流していた時のことです。
「あれ? この曲発注なしでこのままいけるかも?」と思っていた時、ちょうど作曲家から新たな楽曲が届いたのです。
しかもそれはラストの立ち回りのシーンで使うオープニングのロックアレンジ。
オープニングの曲が欲しいとは一言も言ってないのに、しかも狙いすましたかのようなタイミングに思わず声をあげてしまいました(曲もめちゃめちゃいい)
芝居をしているとたまにこういう奇跡が降ってくるので驚きです。

今回裏方の立場に立って改めて、スタッフの熱量を感じることができた。そんな公演でした。
本番も無事に成功し、次また演出をさせてもらえる時に備えていこうと思います。

次回は12月に本番を終えた「山田邦子の門」について語っていきます!
引き続きよろしくお願いします。

 

(C)河原田巧也

河原田巧也(カワハラダ タクヤ)
1991年5月6日生まれ。東京都出身。牡牛座のO型。
舞台『弱虫ペダル』シリーズの泉田塔一郎役や、ミュージカル「黒執事」シリーズのフィニアン役として活躍
Twitter:@takuminar

 

 

 

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