異世界に転生させてあげるから今すぐ死になさいっ!【第8話】

@miminari_zzz

彼女にも思うところがあるのだろう。あまり深く詮索するのも酷だろうから、俺は話を異世界のことに切り替えた。

誰かと食事するのは、楽しかった。この一言に尽きる。ただただ楽しかったんだ。

本来の調子を取り戻した彼女は雄弁に、勇者時代の武勇伝を語ってくれた。

聖剣の一薙ぎでオークを全滅させたこと。

回復魔法担当の僧侶が、実は盗賊だったこと。

「僧侶とはあちらに転生して、勇者としての使命を自覚したあとに酒場で出会いましたの。異世界のことをいろいろ教わりましたわ」

そんな親切な盗賊がいるか、と問い詰めたい気持ちを堪えて次を促す。

各地を支配している魔物の元締めをコテンパンにした挙句、和平条約を結んでいったこと。

洞窟の中で一酸化中毒になりかけたこと……これにはさすがに腹を抱えて笑ってしまったが。

「そして、実は実は……他でもないヴァレンタニア王国の元王女こそが、魔王だったのですわ!!」
「マジかよ! そんなゲームやったことあるぞ!! というか鉄板だろ!」
「わたくしはこちらの世界でゲームを嗜んでおりませんでしたが故に、それに気づいたのは冒険の終盤でのことでしたわ……」

なるほど、異世界とはこうもゲームやアニメと似通っているのか……俺たちオタクにとってはある意味理想郷なのかもしれないな。俺も早く死んで、理想郷に行きたい。

「というか、スズコはこっちの世界ではどこに住んでいたんだ?」

思わず口をついた質問が、彼女の記憶の扉に手を掛ける。

「嘉邦(よしくに)市の端っこの方ですわ。ここと同じく、寂れた都会ですわよ」
「ああ……あそこなら電車1本、乗り換えなしで行けるな。嘉邦市駅からは近いのか?」
「えっと、10分も歩けば住宅街に出るんですけれど、その中の一軒家ですわ。ほら、あそこらへんって先の災害で土地の価格が下落しきっていますから」

スズコの言うとおり嘉邦市は5年前、史上類を見ないほどの災害に見舞われ、一時期は人の住めるところではないとまで言われていた。よくもこんな短期間で復興したものだなと思えるくらいに。

ん……? 5年前?

「訊きたいことがあるんだが、ちょっといいか?」
「はむはむ……いいですわよ」

ギョーザをすっかり飲み込んでしまってからスズコが質問に答える態勢を整える。

「お前の言ってる転生……それ本当に転生か?」
「どういう意味ですの?」
「転生ってのはだな……たとえばスズコ、お前がこっちの世界で死んでどれくらいになる?」
「ええと、大体1年が経ちますわね」
「それは確かなんだな?」

うんうん、と首を縦に振る。やはりおかしい。

「転生っていうのはな、あちらの世界でおぎゃあと生まれ直すことを言うんだ。だから俺が転生したとして、お前と結婚するまでに大体18年は成長に時間を要するわけで……その間お前は待っててくれるっていうのか?」
「ん? えっ? どういう意味ですの?」
「じゃあ、こうだ。スズコは転生したと言ったけど、異世界で赤ん坊から成長していったのか?」

スズコはいまひとつ、合点のいっていない様子で、なおかつ否定してみせた。

「転生したら、わたくしが死んだとき……16歳と同じくらいの身体でしたわよ? それがどうかしまして?」
「それ、転移じゃん? さっき言ってた異世界の1日が24時間ってのもこうでなければ説明がつかないし」
「でも異世界では完全に外見、能力が変わってしまいますのよ。転生と言って差し支えないんじゃないですの?」

●文:モロハナオヨビ
自衛官などを経て執筆活動を始め、今は透明な猫を飼っています。
好きな食べ物は山芋。
Twitter→@258us

 

●絵:ミミナリミミ
【Too lovely to die(死ぬには可愛すぎる)】をテーマに病める時も健やかなる時も可愛い女の子を描いています。フリルとタバコが好きです。
Twitter→@miminari_zzz

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