異世界に転生させてあげるから今すぐ死になさいっ!【第2話】

@miminari_zzz

このままではいけない、と日雇いのバイトに登録するも給料は雀の涙ほどで結局消費者金融に頼らざるを得ない事態。2年で払い終わるはずが、返していたのも初めのうちだけで、1年経つころには借入先が2社。ちなみに現在4社。延滞を重ねに重ねたため、信用情報は真っ黒。一銭たりとも借り入れることができない状況下、それでも闇金にだけは手を出さなかった。

この歳で両親を頼るわけにもいかず……というかどうやって説明しろというんだ。母から届くメールは悉く無視、父の電話は留守電すら聞いていない。

……そもそも俺をこう育てたのはあの人たちだろうが。

「死ぬ前に一度でいいから女を抱いてみたかったな」

洗面所に乱雑に置かれてある赤と銀の縞々模様をした、筒状のものを眺めて思う。

「人生どん詰まり。なんでこうなっちゃったんだろうな」

ワンルームに上半身裸の男1人、ポツリとつぶやく様はあまりに滑稽すぎて笑えない。引っ越してくるときに母親に言われて持ってきた、幼いころから使っているカラーボックスも、口を半開きにしてややひきつっているようにも見えた。

小さいころはこのボックスいっぱいにソフビ人形が入っていたものだ。それが今では、第2のゴミ箱と言っても過言ではなかろう。

「アッハッハッハ!!」

次から次へと湧いてくる憂いや悲しみを打ち払うべく、笑ってみた。鼻の下に伸びた髭がチリチリと鼻孔に触れる。

「死にてえ!! 死にてえなあ!? こんなクソみたいな世界とおさらばして、異世界にでも生まれ変わりてえなあ!!」

「……すてき。それでこそわたくしの見込んだ『勇者さま』ですわ」

ワンルームに上半身裸の男1人、のはずだ。

「な、なんだ……? 今女の声が聞こえたような……?」

「こっちですわよ、勇者さま」

俺は声のする方を向いて、じっと目を凝らしてみた。第2のゴミ箱、もといカラーボックスだ。ポケットから眼鏡を取り出し、掛けてみてもカラーボックスだ。ひきつった表情を浮かべている。

が、しかし気付く。

「ひ……ひきつってるってなんだよ!?」

自分の思考の異常性に自らツッコミ。この現象をアニメや映画の表現を用いて言うならば、そう。

「空間が歪んでるじゃねえか!!」

「そ・の・と・お・り」

歪みはやがて渦を形成し始めた。

なんだよこれ……なんだよこれ!!

「わたくしはここでいう異世界から来ましたの」

渦の中心から姿を現したるは。

ゴシックロリータを彷彿とさせるドレス。縦ロールのブロンド髪に黒いバラの髪飾り。やや意地悪そうな、それでいて妖艶に吊り上がった明るい赤色の目。

平たく言って、姫。盛って言うなれば美少女すぎるキャバ嬢。

「まずは自己紹介をさせてくださいませ。ヴァレンタニア王国の王女、スズコ・ヴァレンタニアですの」

「な……ななななな……」

自称公称コミュ障な俺が言葉を出ないのをいいことに彼女は勝手にぺらぺら説明を始める。

「驚くのも無理はありませんわ、異世界人を見るのは初めてでしょうからね。わたくしがここへ来たのには、ごめんなさい、聞いていただけますか?」

辛うじて首を縦に振り、近くのダンボールに座り直すことで話を聞く態勢を立て直した。

「……ありがとうございます。どうぞ楽にしてくださいまし。さて、理由なのですが、今ヴァレンタニア王国は所謂内戦状態にありますの。ここ日本にもありますわよね? 右翼と左翼というものが」

あるある。俺はボソボソと答えた。

【異世界に転生させてあげるから今すぐ死になさいっ!】バックナンバー
第1話

●文:モロハナオヨビ
自衛官などを経て執筆活動を始め、今は透明な猫を飼っています。
好きな食べ物は山芋。
Twitter→@258us

 

●絵:ミミナリミミ
【Too lovely to die(死ぬには可愛すぎる)】をテーマに病める時も健やかなる時も可愛い女の子を描いています。フリルとタバコが好きです。
Twitter→@miminari_zzz

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