【河原田巧也のブタイウラ!】第3回 ~初演出の“トライアル公演”~
こんにちは、俳優の河原田巧也です。この記事では、僕がリアルに感じた演劇の舞台裏を隔週で語っていきたいと思います! 今回は僕自身初となった“演出作品”について、お話しさせて頂きます。
初演出の舞台で行った取り組み
今回僕が“演出”として携わったのは、今月20日まで公演が行われた『RANPO chronicle 彼岸商店』という舞台です。5日間行われた上演のうち、最初の3日間は「トライアル公演」と呼ばれるスタイルの公演でした。
通常の公演と同様に、お客様に舞台を公開しつつも様々な試みにチャレンジするのが「トライアル公演」。海外では割と行われていることもありますが、まだ日本では聞きなれない言葉かと思います。

(C)河原田巧也
そんなトライアル公演を行うにあたって、今回トライしたのが以下の試みです。
・ロビーの明かりは無く、受付スタッフは喋らない(仮面をつけている)
・楽屋の密を避けるため、仮面を被った役者がロビーや舞台上にいる。客席に観客に扮した役者がいる
・換気を良くするため、袖幕を無しにする。舞台上に(舞台の奥に)楽屋がある
・幕間に消毒の時間を入れる(芝居中に)
やはり今のご時世もあり、トライのほとんどが「感染予防対策」「新しい様式での舞台のありかた」を探るものになりました。実際に僕も仮面をかぶって客入れから参加したので、感じた“効果”についてもお話ししたいと思います!

(C)河原田巧也
試みの目的と実際に感じた効果
まず、「ロビーの明かりが無い」ことについて。ロビーが暗いので、劇場に入ったとたんに奇妙な空気が観客を包みます。実際、お客さん同士の会話がほとんどなくなり、不思議な雰囲気が一層強調されることに。
さらに、役者が観客に扮して客席に座っているため、お客さんからすると「さっきまで同じ観客だと思っていた人がステージに上がる」という状況になります。これによって、“身近で行われている物語”という感覚を強くすることができました。
舞台奥に見える楽屋も、幕が無いために袖中が見えてしまうのも、題材が「幽霊」であるため常に人の気配が感じられて効果的。このように“作品は舞台上で行われている”という固定概念を崩せば、まるでアトラクションのような“空間まるごと楽しむ”舞台をつくることができます。

(C)河原田巧也
ちなみに、袖中や楽屋が見えてしまうのでスタンバイ中の役者には仮面をかぶってもらうようお願いをしていました。舞台上でも人が密接しないよう、カーテンコールは「歩きながらお辞儀してハケる」という流動的なスタイルに。こういった細かな工夫もたくさん凝らし、無事に公演を完走することができました。
稽古の後、毎日のように遅くまでプロデューサーと打ち合わせを重ねたりと苦労も多かった今回の公演。作品のあり方について多くのことを学ぶことができたかな、と思っています。
さて、次回は演出家として初稽古から本番までの動きを実際にご紹介していきます。それでは、またお会いしましょう!
【河原田巧也のブタイウラ!】バックナンバー
第1回 ~活動自粛と演劇人~
第2回 ~活動自粛と演劇人~

(C)河原田巧也
河原田巧也(カワハラダ タクヤ)
1991年5月6日生まれ。東京都出身。牡牛座のO型。
舞台『弱虫ペダル』シリーズの泉田塔一郎役や、ミュージカル「黒執事」シリーズのフィニアン役として活躍
Twitter:@takuminari