職人魂が作る化学反応

匠の技 - 科学反応 –

「金物屋」
この言葉を聞いて何をイメージするだろうか。
私は鍋や工具などを売っている街のお店を思い浮かべた。
しかし、金物にも実は色々種類がある。
「鍋・釜」、「利器・工具」、「建築金物」、「家具金物」。
その中でも、家具金物を含め、建物の居室内に存在する金物全般を取り扱っているのが「アトムリビンテック」。
取引企業は1,000社を超える、室内金物に関する国内トップメーカー。
ドアノブ、鍵、引き戸、取手。
私達が普段意識せずに使用している物や、目にすることのないインテリア内部の金物まで。
各インテリアメーカーが彼らの金物を商品に利用しているのだ。
今回は、このアトムリビンテックのアーバンスタイル事業部、峰島(みねしま)さんにお話を伺った。

生活を変える力。
インテリアについている金物。
インテリアが好きな方は多いだろう。
私も大好き。将来は古いマンションを購入してリフォームをして…。想像すると楽しくて仕方がない。
しかし、インテリア選びの際に、デザインは見るが、その中の一部である金属部品に目を向けたことがあるだろうか。
金物はあまり目に着くことの無い、只の金属部品。
ドアノブやクローゼット。
私達が生活するうえで、毎日必ず触れているもの。
もしかしたら、貴方の部屋の中で一番触れている物かもしれない。
もしかしたら、貴方の部屋の中で一番大切な部品かもしれない。
しかし、自分の家のドアノブがどのような形をしているか、パッと思い出せるだろうか。
身近だからこそ、逆に思い出すことが出来ない。
対象物として意識にすら入ってこない内装金物。
目立つ存在ではない。
だが、私達の生活スタイルを大きく変える力を持っているのだ。

例えば、システムキッチン。
戦後、キッチンは台所空間の近代化を支える重要な要素として、大きく様変わりする。
日本人のライフスタイルを変える原動力となり、その中でも多様なキャビネットを組み合わせる
システムキッチンは、公団、公営住宅に採用され、時代の主力商品として広く普及することになるが、大量生産に対応する開き扉用の蝶番(ちょうつがい)は、ヨーロッパ製のスライド丁番が主流だった。
そしてその「スライド丁番」を日本で最初に量産化したのがアトムリビンテックなのだ。
例えば、日本古来からある障子や襖。
好みの開き具合で止める事が出来る日本独自のスタイル。
少しだけ開けておいて、隣の部屋の声を聞いたり、様子を寝ている子供達を見ることが出来る。
洋式のドアは、開くか閉じるか。
途中で開けておいても、閉じてしまったり、隣の部屋は見えない。
このようなYESかNOかではなく、その時々によって形を変えるものがとても日本らしい。
そこで、日本の文化と洋式のドアを組み合わせた、スライドタイプの引き戸が出来た。
日本文化の粋な部分だけを切り取って、現代に使う。
これも金物によって実現した形だ。
金物には、新たなスタイルを生み出し、人々の生活を変えるクリエイティブな力があるのだ。

職人、匠の技。
明治36年から続き、110年を越える歴史をもつ老舗金物屋、アトムリビンテック株式会社。
創業者は江戸指物の金具職人だった。
江戸指物(釘などの接合金具を使わずに、木と木を組み合わせて作られた家具・建具・調度品などの総称)につける、飾り金具を作っていたそうだ。
もちろん一点一点、手作り。繊細で、煌びやかな装飾は一つ一つ鏨(たがね)を打ち込んで形成する。
その後、和式から洋式建築に移り、機能中心となっていった日本の生活スタイル。
時代の変遷と共に工業化が進み、細微なところまで作りこむ文化は衰退していったが、日本本来の文化は、そういった細かいところまで作りこむところにあるのではないだろうか。

江戸時代の装飾は、目を細めないとその繊細で丁寧な模様は確認出来ないほどに作りこまれていた。
まさに様式美の時代。細部に拘った装飾だ。
職人、匠の技。
しかし、現代ではその装飾美が無駄なものとなっているのかも知れない。
だがそこに、日本の「粋」というものがあるのではないだろうか。

峰島さん:『飾り職人から始まった職人の心意気というのは、大切にしないといけない部分だと思います。自分達だけではなく、その気持ちは他の協力工場さんや現代の職人やアーティストの方にもなどにも伝えていきたいんです。』

職人魂が作る化学反応。
創業から110年以上が経っても、その職人魂はなくならない。
江戸指物の飾り金具で培った想いや理想は、現代でも脈々と受け継がれている。
ドアノブ一つとっても10人の建築家がいれば、10通りの要求がある。
色、長さ、大きさ。
彼らは、それに応えるため、5万点以上のアイテムを揃えている。
職人の心を持ち続けている彼らは、現代で新しい試みを行っている。
様々な分野の現代の職人。
家具デザイン、音楽家、茶道家、料理研究家、フォトグラファーなど、様々な分野で活躍するクリエイター達。
匠の技を持つ者達とコラボレーションすることで、化学反応が起こり始めている。

コンテナを使った空間作り。

例えば、2013年から始動したプロジェクト「コンテナ」。
コンテナ。一般的には荷物を運ぶ大型の入れ物。
このコンテナを活用し新しいコミュニティを作り上げた。
パートナー企業と組み、コンテナを使った空間作り。
プロジェクト「コンテナ」で作り上げたものの一例。
日本酒バー。
ここで活躍するのが、コラボレーションを行っているクリエイター達だ。
クリエイターの相性も考え協力して物作りを進めていく。

峰島さん:『クリエイターの相性は大事で、あの人とこの人なら良い仕事が出来るっていうのが感覚的ですがあるんです。アトムとして前面に出て行くのではなく、出来るだけクリエイターさんに任せていますね。』

コンテナを使った空間アトムリビンテックとして出来ること。
人と人とを繋ぎ新たな空間を提供する。

峰島さん:『本来ならば、アトムが全てのパーツを収めるということが一番利益に直結します。でも、今は当社の金物優先ではなく、新たな空間を色々な場所に提供することを重視しています。』

埼玉県深谷市でも行っている。
キッチン。
街づくりの一環で市からの依頼を受けた。
運営は市が行っているため、作り上げたキッチンコンテナは、一般市民に低価格で貸し出されている。
市の名産の「深谷ねぎ」や、野菜を使った創作料理が振舞われたり、ゆるキャラとの交流イベントが行われたり。
文字通り市の新しいコミュニティスペースとなっている。

誰よりも先にやる。一番最初にやる。

クリエイターを集め、コラボレーションによる化学反応を起こす。
もはや金物とは関係ないんじゃないか。
ブランディングの一環として行っているのか?
売り上げに貢献するのか?
うちの会社、何の会社だっけ?
社内からも色々な声が挙がる。
それもそうだろう。
芸術・クリエイティブ・アートと呼ばれる世界から、新たなスタイル・文化が生まれるかもしれない。
しかし、どうなるか分からない。
もしかしたら、売り上げには結びつかないかもしれない。
もしかしたら、形にならないかもしれない。
どうなるか分からないことを、クリエイター個々の活動ではなく、一上場企業が行っているのだ。
それも、一つの街を変える程の大きな力を使って。
これは、アトムリビンテックが職人・匠の時代から受け継ついで来た、『誰よりも先にやる。一番最初にやる。』という精神によるもの。
どうなるか分からない。
でも、まずやってみよう。
この精神が、新しいものを作り、生活スタイルを変える。
もしかしたら、数年後には一般家庭がコンテナに変わっているかも知れない。
彼らが挑戦することで、私達の世界が、生活スタイルが変わる。

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