0から700へ

カルビー・スナックスクール

 

 

スナック菓子を正しく食べる
スナック菓子、炭酸飲料、カップラーメン。
この言葉を聴いて、どう思うだろう。
「体に悪い」
こう思う人も多いだろう。
実際に私も、小さい時から親に「体に悪いから食べるな」と言われてきた。
子供たちの大好きな食べ物、そして親に嫌われる食べ物の筆頭でもある。
近年は子供の肥満の急増も問題視されている。
食生活を取り巻く社会環境が大きく変化し、不規則な食事、栄養の偏り、肥満や生活習慣病の増加など、食の問題に対して解決するキーワードが生まれた。
「食育」
2005年には食育基本法が生まれた。
それに伴い、学校教育のカリキュラムにも食育が追加された。
そんな時代背景の中、食育に正面から取り組んできた、スナック菓子メーカー「カルビー」のストーリー。

 

 

カルビー・スナックスクール
食育では、嫌われる立場にあるスナック菓子。
そもそも本当に食べてはいけないのだろうか。
カルビースナックスクールチームの太田さん

 

『確かに他の食べ物と同じように、食べすぎや食べると良くない時間帯はあります。でも近年の指導の多くは、食べてはいけない。日本の子供達が、皆その教育を受けてしまうと、当社の未来はありません 笑』

 

アンケートを先生に行った。
「なぜ食べてはいけないという指導をするのか」
油が多い。塩が多い。
しかし一番多かった答えが「なんとなく」。
正しい教育を行ってほしかったが、まだ食育という言葉が生まれたばかりの時代。
先生達も、食育に関する指導方法を持っていない。
「ならば自分たちが教えればいいのではないか」という思いから、2003年、カルビーは費用を一切取らずに、自分達で全国の子供達に食育を行う活動を始めた。
「カルビー・スナックスクール」

 

 

広報部が事業立ち上げ
カルビー・スナックスクールは、食に関する知識の普及を行うといった趣旨と、食育を推進する部門が無かったことから、広報部が担当することとなった。
当時広報部に所属していたのは4名のスタッフ。
普段の広報業務をやりながら、並行して事業立ち上げを行う。
子供達に対して授業を行うという話は決まっていたが、カルビーは教育そのものに関しては未経験。

 

太田さん:『実際に子供達に教える時に、子供に望ましい知識がどの程度なのか、どうしたら理解してもらえるかが全く分かりませんでした。そこで、食育の専門家でもある、小学校の現役栄養職員からアドバイスを受けながらプログラムを作ったんです。』

 

ゲームにして楽しんでもらうのはどうか。
理解しやすいようにビデオを用意するのはどうか。
カルビー・スナックスクールの記念すべき第1回は、アドバイスを受けている先生の勤める学校で行った。

 

 

飛び込み営業の日々
第1回目の授業が無事終わり、3校目までは学校栄養職員の紹介で決まった。
ここから自分達の力だけで進めることになった。
もちろん授業を行うのもカルビーの広報部スタッフ。
4校目、大きなハードルにぶつかった。

 

太田さん:『授業をさせてくれる学校が見つからなかったんです。』

 

企業が出張授業をすることがなかった時代。
広報課長も、学校にアポ無しで飛び込み営業の日々。
また、アポ取りの電話営業も行った。
しかし小学校側から見れば、お菓子メーカーを名乗る男性からの営業。
「文具メーカーさんならまだしも、なんでお菓子メーカーさんが。結構です。」
企業の宣伝ではないか、商品販売・あっせんがあるのではないかと不信がられて、門前払いが続く。

 

 

挫折
費用は一切頂かず、授業も先生ではなくカルビーのスタッフが行う。
話さえ聞いてもらえれば、やりたいと思って頂けるのでは。
全国紙に新聞広告を出そう。

 

太田さん:『これで問い合わせが沢山来る。まだ少ない人数で、授業の依頼にどう対応したらいいか?問い合わせが来た後の対応を考えていました。』

 

しかし、問い合わせが来たのはたった1件。

ダメだ、打つ手が無くなった。もともと利益無しの事業。
それなのに、コストを掛けても進めることさえ出来ない。

自信を失っていた中、もらった言葉がある。

「お客様に、食べ物への興味や正しい知識を持っていただくのも、食品企業の重要な使命です。地道にやっていくしかない。」

後押しをし続けてくれたのは、他でもないカルビーのトップだった。

 

 

食育基本法
2005年。
一つのきっかけで大きく状況が変わる。
食育基本法の制定。
学校教育のカリキュラムに食育が追加されたのだ。
学校で先生が食育を推進しなくてはならない。しかし、先生達もどう教えていいか分からない。
その時に、カルビーからの連絡を思い出して頂けた。
授業はカルビーのスタッフが行う。費用は掛からない。
「それなら試してみよう!」
ようやく授業をすることが出来た。
更に、学校間のクチコミ力は凄かった。授業を受けた先生からの紹介により反響が生まれる。
実施した学校はリピーターになる。反響が反響を呼び、実施校は一気に伸び続ける。
2005年には約300校。
2006年には約400校。

 

 

0から700へ
2013年の訪問数は約700校。
それ以上の申し込みが集まる。

 

太田さん:『今はお申込が多すぎて、お申込み頂いた全ての学校を訪問したいんですけど出来なくなってしまいました。』

 

しかし、ただお断りするだけでは無い。
カルビースタッフが訪問出来ない代わりに、先生自身で授業が行えるように、これまでに作り上げたカリキュラムを教材として提供している。
スライド教材とDVDを使い、2013年は100校程の学校で、先生自身が食育授業を行った。

 

 

学べるのは子供だけではない
出張授業に行く学校は東京だけではなく、北海道、東日本、近畿など、ブロック毎に2005年から講師を配備。
もちろん全員カルビーの従業員。
専任講師の中には、年間100校ほどを担当する者もいる。
加えて、サポート役の講師も参加する。
普段は別の部署で働いている。部署は様々。
工場だったり、マーケティングだったり、営業だったり。
普段はやらない講師という仕事。やはり緊張する。
しかし、教室の扉を開けると子供達が拍手をしてくれ、目を輝かせて待っていてくれる。
待ってもらえて、拍手で迎えてくれる仕事はそう体験出来るものではない。
講師には話すのが苦手な人もいる。
それでも彼らなりに、自分達の想いを子供に伝えようとしている。
「工場ってこんなに暑いんだよ」「皮むきってこんなに大変なんだよ」
うまく話が出来なくても、子供達の心には響く。
授業の後に、わざわざ工場に会いに来てくれた子供もいるそうだ。

 

太田さん:『授業に行き子供達と接することで、従業員が働く喜びや誇りを改めて感じてもらえるきっかけにもなっています。ここで働くことが出来て嬉しいという事を言ってもらえるんです。』

 

 

お客様との接点
カルビーは他にも子供達を育む取り組みを行っている。

開発部がある宇都宮地区で行ったお菓子コンテスト。子供達から寄せられた様々なお菓子のアイデア。
実際に試作品を作り、ユニークなアイディアを表現した子供達を呼んで表彰式とパーティを行う。

これらは全て直接的な利益が出るものではない。

なぜここまでやるのだろう。

 

太田さん:『様々な場面でお客様と接点を持とう。あらゆる接点を持って、ファンになってもらいたい。それがカルビーの考えなんです。』

 

 

思い出に残る接点
カルビーが行う食育。
食に対しての知識が育まれる場だ。

しかしそれだけではない。
子供に取って、カルビーと触れた「楽しかった思い出」になるのだ。

しかしお申込み頂いた全ての学校を訪問することは出来ない。
全国の子供達がこの授業を受けて、思い出とすることは出来ないのだ。

全国に小学校の数はだいたい2万校、1学年の生徒は110万人ほどいる。

 

太田さんは言う。

『どんな形でもいいから、全ての子供達が、小学校の卒業までにカルビーに一度は触れて卒業して欲しい。無謀な夢ですが、小学校1年生の時に朝顔を育てるように、カリキュラムの一つになりたいんです。笑』

 

「この授業やったやった!2年の時習ったよね!」
「あー、それ私も受けたー!」

カルビーという存在が、「全国の小学生が健康な生活を送る為の知識を身につけるきっかけ」になり、そして「楽しかった思い出」になって欲しい。